モバイルで簡単に電子署名、SafeNetが描くユーザーフレンドリーなPKI

日川佳三 2015年09月24日 07時00分

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 SafeNetは、PKI(Public Key Infrastructure、公開鍵暗号基盤)やOTP(ワンタイムパスワード)など、セキュリティを担保する認証分野の製品を開発しているベンダーだ。例えばPKIでは、認証情報となるデジタル証明書を運用するためのミドルウエアや、デジタル証明書を格納するデバイスなど、企業のPKI活用を支援する製品をそろえている。

 「個人や端末を識別するID情報を、安全に簡単に運用したい。こうした需要が高まっている」――SafeNetでProduct Management担当ディレクターを務めるEric Avigdor氏は、PKI製品を中心とするID関連製品に注力する理由をこう説明する。背景には、そもそも管理すべきIDが急増していることと、現状ではまだIDを活用するための技術が未熟であるという事情がある。

SafeNetのProduct Management担当ディレクター、Eric Avigdor氏
SafeNetのProduct Management担当ディレクター、Eric Avigdor氏

 2015年現在、管理すべきIDは、モバイル端末の爆発的な普及によって急速に増えている。SafeNetの推定では、2020年時点でネットワークに接続したデバイスは260億台に、タブレット端末は12億台に達する。2014年時点でも、ID情報は500億~600億件あり、平均して1人当たり24個のIDを使用中だ。

 IDが増える一方で、「IDを安全に運用するためのPKI製品には課題が多い」とEric氏は指摘する。「市場にある現状のPKI製品は使いにくい。企業がやろうとしていることができない」(Eric氏)。例えば、税金をモバイル端末で申告する需要や、大学の授業や試験を遠隔で実施する需要に対して、現在のPKI製品は上手に応えられないという。いかに簡単にPKIを使えるようにするかが今後の課題だ。

 こうした中でSafeNetは、企業がPKIを適用して実現したいことを、できるだけ簡単にできるようにしているという。今後も、PKIをこれまでよりも身近にする製品群を拡充していく意向だ。直近では、「数カ月以内に、モバイル端末でPKIを扱いやすくする製品サービスを提供する」(Eric氏)。モバイル端末で使うデジタル証明書をクラウド側に置いておき、これをリモートから利用する“署名 as a Service”も検討中という。

公開鍵暗号を署名に応用、世界の政府が使用

 そもそもPKIとは、公開鍵と秘密鍵のペアが持つ特性を応用して電子署名を実現するセキュリティ技術だ。秘密鍵を使って署名した場合、この秘密鍵とペアを成す公開鍵を使って検証できる。正しく検証できた場合、公開鍵とペアを成している秘密鍵を使って署名したことになる。

 身近なところでは、ウェブ閲覧のSSL通信(HTTPS)にPKIは使われている。クライアントとサーバ間の認証や暗号鍵の交換、通信データの改ざん検知に使う。これ以外にも、文書や電子メールが改ざんされていないことを証明する手段として、文書やメールに電子署名を施す、といった電子署名のベーシックな使い方がある。こうした際に使うデジタル証明書は、利便性を高めるため、外部接続デバイスに格納して持ち運ぶ例が多い。

 同社のPKI製品は、世界各国の政府公共機関などで、主に電子署名の需要で使われているという。手続きに電子署名を取り入れることにより、手続きのコストを削減したり、サービス提供のスピードを高めたりできるからだ。例えば、欧州にはeIDAS(Electronic identification and trust services)と呼ぶ仕組みがあり、自国のID情報を使って国境を超えられるようにしている。このほか、インドとブラジルは大規模な電子調達をPKIで実現。オマーンは国家のインフラをSafeNetが構築した。日本もマイナンバー制度が始まるなど、PKIの需要が高まっている。

スマホによる電子署名を簡単に、クラウド型署名サービスも検討中

 SafeNetが数カ月以内に提供を予定しているのが、モバイル端末(iOS/Android)による電子署名を簡単に実施できるようにする“モバイルPKI”製品群だ。「PKIの使いやすさを高めてPKIのユースケースの幅を広げる製品」(Eric氏)になるという。モバイル端末を使った電子署名のあり方として米SafeNetは、3つのシナリオを描く。このうちの2つをモバイルPKI製品でカバーする。

 モバイルPKIで実現するシナリオの1つは、デジタル証明書を格納したデバイスを、パソコンだけでなくモバイル端末からも使えるようにすること。これまでのUSB接続型のデバイスの代わりに、Bluetooth接続のデバイスを用意し、ここにデジタル証明書を格納する。「Bluetoothをデジタル証明書ストアに使うことは革新的だ。Bluetoothならほとんどの端末につながる」(Eric氏)。

 もう1つのモバイルPKIのシナリオは、モバイル端末のSIMカードにデジタル証明書を格納できるようにすることだ。仕組みとして、GSM方式の携帯電話事業者の業界団体であるGSMアソシエーションの規格を採用する。この規格に準拠したミドルウエアによって、携帯電話事業者がモバイル端末のSIMカードにデジタル証明書を格納できるようになる。

 上記の2つのシナリオは、数カ月以内の実現を予定する。これとは別に、米SafeNetにはもう1つ、現在検討中のシナリオがある。携帯電話網を経由して使える、クラウド型の署名サービスだ。

 これを使うと、モバイル端末側にデジタル証明書を格納しなくても、クラウド側にあるデジタル証明書を使って電子署名ができる。「as a serviceの形態で署名機能を利用できる」(Eric氏)。安全性については、クラウド側にあるHSM(Hardware Security Module)にデジタル証明書を格納してデジタル証明書が漏えいしないようにするほか、携帯電話網を介してクラウドにアクセスすることによって端末を認証する。

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