本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、米HPの Meg Whitman最高経営責任者(CEO)と、日本IBMの朝海孝 理事の発言を紹介する。
「現在のHPより小さくなる新会社は、エンタープライズニーズにより的確に応えられる」 (米HP Meg Whitman CEO)
米Hewlett-Packard(HP)が先ごろ、リストラの一環として、約30万人の従業員の1割程度に相当する2万5000~3万人を追加削減すると発表した(関連記事参照)。
米HPの Meg Whitman最高経営責任者
HPは今年11月に、サーバなど企業向けIT機器やサービスが主体の「Hewlett-Packard Enterprise」と、PC・プリンタ事業を手掛ける「HP Inc.」に分割し、2つの上場会社として再出発する予定だが、今回の人員削減はHP Enterpriseが主な対象となっている。
Whitman氏の冒頭の発言は、今回の発表に際し、同氏が引き続きCEOを務めるHP Enterpriseが、一連の変革によってエンタープライズ事業にフォーカスした体制を整備することで、一層強力に同事業を推進できるようになると強調したものである。
HPはこれまで数年にわたってリストラを実施してきており、2014年10月末までに5万5000人を削減。今回新たに2万5000~3万人を追加したことで、ここ数年の人員削減は累計8万人を超える見通しだ。
HPの業績は厳しい状況が続いている。直近の2015会計年度第3四半期(2015年5~7月)は、売上高が前年同期比8%減、純利益が同13%減だった。減収は過去16四半期で15回目、減益は5四半期連続となっている。ただ、このところの業績がさえないのはPC・プリンタ事業の不振が大きく、エンタープライズ関連事業は直近四半期の売上高で同2%増と堅調ぶりを示している( 関連記事参照)。
HP Enterpriseの年間売上高は500億ドル超になる見込みだ。Whitman氏は同社の事業戦略として、ハイブリッドクラウド、セキュリティ、ビッグデータに関連する製品・サービスに注力していく姿勢を示した。
ちなみに同氏は、HPのクラウド事業の売上規模について、2015会計年度(2014年11月~2015年10月)で前年比20%増の約30億ドルになることも明らかにした。具体的な中身が不明なので競合他社との比較が妥当かどうか分からないが、HP Enterpriseではハイブリッドクラウドをキーとして、同事業をさらに拡大していく構えだ。
ただ、HPのクラウド事業は、OpenStack陣営の先陣を切っていることこそ知られているものの、実際のビジネス上での存在感は今のところ乏しい。折しも4月には米国で「HPがパブリッククラウドサービスから撤退する」との一部報道があり、HP幹部が否定のコメントを出すといった騒ぎもあった。