マイクロソフト 各務氏 ハイブリッドクラウドを導入する顧客のパターンは2つあります。1つは、ストレージからじっくりと導入していこうというパターン。もう1つは「野良クラウド」というか、事業別のクラウドがバラバラにできていて、「このまま放っておくと情報漏えいにつながる」という危機感から、セキュリティを考えてクラウドをまとめていこうというパターンです。
現状では、日本のホステッドクラウドとAWS、Azure、あとはプライベートクラウドがほとんどです。先ほど林さんが仰っていましたが、運用管理やID管理といったITマネジメントをするべきです。顧客が実際に気にしているのは、クラウドにデータをどう持って行くのかといったマイグレーションコストです。PaaSに持っていく、IaaSベースでやる、SaaSに切り替えるなどの手段はありますが、何よりも事業部が勝手に使っているクラウドをIT部門できちんと見たいという話はすごく多いです。
ヴイエムウェア ハイブリッドクラウド本部本部長 巨勢泰宏氏 2008年入社し、同社エンジニアリング部門を統括後、2014年よりVMware vCloud Airの事業戦略の立案から市場展開までを牽引。仮想化の既存の顧客を中心に透過的なハイブリッドクラウドの導入の支援を推進する
VMware 巨勢氏 大前提として、クラウド導入はゴールではありません。クラウドを活用する場合は、当然それなりのメリットを享受できなければ意味がない。クラウドを検討する企業にはそれぞれ契機があります。例えば、セキュリティ対策のための人員が足りないとか、コンプライアンスのためとか、業界標準に準拠してクラウドに移行するというケースもあります。学校や地方自治体などでは、ITリソースが非常に少ないため、アウトソースとしてクラウドを活用するケースも多いという実感があります。
クラウド化する理由のある企業に対しては、当然こちらで何をどうするかという話をします。あるいはソフトウェアの供給にあたり、コストの使い方も説明しています。クラウドの定義は業種や業態によって異なりますし、多種多様であると思います。そのため、クラウド化を目的とせず、場所に依存しないITを作る「ワンクラウド」を推進しています。
ミッションクリティカル環境でもAWSは強いか
ZDNet パブリッククラウドの分野で、現在最も強い存在感を持つのはAWSだと言えます。しかし、企業の基幹システムへの導入を考えると、また異なる視点があるように思いますが、いかがでしょうか。
IBM 紫関氏 AWSにはさまざまな機能がありますが、ベースはIaaSです。そうすると、一番のライバルはOpenStackということになると思います。OpenStackがAWSに対して持つ大きな優位性は、まさにプライベートとパブリックを組み合わせたハイブリッドクラウドにあるのです。OpenStackを使いたいという企業の要望は、以前は「業界のスタンダードになりそうだから」という漠然としたものでした。現在は、ダッシュボードのUIが気に入っているのでこのベンダーのものを使いたいといった具体的なものに変わってきているのです。
ユーザーが直接触る部分がOpenStackの指定レイヤになってくる可能性があります。しかもOpenStackはプライベートとパブリッドの両方が使えるとなれば、この業界の勢力図が変わってくる可能性もあります。
NTTコミュニケーションズ クラウドエバンジェリスト 林雅之氏 事業計画、外資系企業や公共機関の営業、市場開 発などの業務を担当。政府のクラウドおよび情報通信政策関連案件の担当を経て、2011年6月よりクラウドサービスの開発企画、マーケティング、広報・宣伝に従事
NTT Com 林氏 AWSは、BtoC向けの開発機能やビッグデータ処理系のシステムには非常に強い。ただ、エンタープライズ向けという意味では、我々もまだまだ勝負ができると思っています。われわれの強みは、顧客に対するネットワークのアクセル化です。それにネットワークやコロケーション、セキュリティなどを絡めて提供できることなのです。
また、NTT Comではマネジメントという形で、グローバルポータルによって現地法人をつなぐソリューションも提供しており、大企業には結構強いと思います。ただ、AWSをまったく排除しているわけではなく、オプションとして選べるようにしています。