健康経営を推進するには「難しく考えない」
健康経営に関心はあるけれど、いったい何をどうすればいいのでしょうか。「健康経営」の提唱者であるNPO法人健康経営研究会の岡田邦夫理事長(産業医)に話を聞きました。
――健康経営の目的は何でしょうか。
健康経営の目的は、会社が従業員の健康に関与することで、企業と従業員との間で信頼関係をつくり、エンパワーメント(自律的に行動する力)を引き出すことにあります。また従業員が健康を維持することで生産性を高め、医療費削減にも貢献します。
NPO法人健康経営研究会 理事長で産業医の岡田邦夫氏
――健康経営を提唱されたきっかけは。
1975年に大阪ガスの安田博社長(当時)が長期経営戦略に「従業員の健康」を宣言し、私が大阪ガスに招聘され、健康開発のプロジェクトが始まりました。その後、うつ病の増加や過重労働による自殺に対して企業の責任が厳しく問われる事件(電通事件)が起こるなど、従業員の健康づくりを経営戦略として取り入れなければ、従業員の生産性や経営リスク上、大きな問題になると考え、健康と経営に関する勉強会を立ち上げました。そして2006年3月にNPO法人健康経営研究会を設立しました。
――「健康経営」の意義、効果、重要性はわかりましたが、実際に推進するにはどうすればいいのでしょうか。
健康経営の推進は何よりもトップがけん引し、経営戦略として従業員の健康を位置づけることが重要です。健康経営は経営戦略の一環で、これまでの健康管理とは違うという認識を持つ必要があります。そして健康経営の取り組み方の基本は「きちんと健康投資をし、投資効果を高める」ことです。
健康器具を購入するなどの取り組みは結構なことですが、ただ買い与えているだけでは健康経営とは言えません。投資対効果を検証し、リターンを求めていくことが重要です。
――投資と聞くと経営資源が乏しい中小企業にはハードルが高く感じます。
健康投資の考え方として、まずは「時間投資をしてください」と言っています。時間投資とは、例えば社長が従業員と健康について話し合う時間をとることから始めるのです。健康について話し合うことで、健康意識を高めるだけでなく、社長が従業員のことを考えているというメッセージにもなります。このことは期待されていると感じることで、成果が高まる「ホーソン効果」を生み従業員のやる気を高めます。
次に「空間投資」をしてください。空間投資とは環境づくりです。例えば喫煙室を廃止して、談話室にするのです。健康によい飲み物(無糖のコーヒーなど)を用意し、従業員間の対話を促進するなど、健康とコミュニケーションづくりの場を提供するのです。