マルチクラウド時代のバックアップ新手法(前編)--散在するデータを管理する - (page 2)

古舘與章

2015-10-13 07:30

 データを駆使するということはデータをコントロールするということにつながり、これが昨今、企業の頭を悩ませている情報漏えいの防止や内部統制にもつながっていく。データをコントロールするには、データをいかに保護するかが焦点となり、企業にとっては一番重要な課題となる。

マルチクラウドの最重要課題はデータの保護

 少し話が脱線したが、マルチクラウドの最重要課題はデータの保護といえる。複数の環境にデータが散在するため、企業はこれらをより簡単に、一元管理できる方法を模索していくことが予想される。そうなった場合、既存のバックアップでは実現が非常に難しくなっていく。

 これまでのバックアップ製品やサービスはオンプレミスでの利用を目的として成り立ってきた。OSの初期イメージをバックアップし、追加されたデータをファイルやデータベース(DB)単位でバックアップしていく組み合わせの製品やサービスから、ストレージまるごとをレプリケートする高度な製品やサービスとさまざまなバックアップソフトやバックアップ手法がそこには介在してきた。

 しかしながら、これらはマルチクラウドでは運用が難しくなる。なぜか。

 クラウドサービスを利用する場合、これまで基盤レベルでできていた作業がほとんどできなくなる。ストレージはクラウド事業者が管理する範囲であるため、これらをまるごとバックアップするようなことは、基盤をある程度専有できるプライベートクラウドでのみ実現可能で、その場合もコスト面や運用面で課題が多くなることが想定される。

 一方、クラウドでバックアップは必要ないのではないかという意見もある。たしかに、可用性においてはオンプレミスよりも信頼性が高いクラウドサービスがほとんどだが、この場合、どこまでがクラウド事業者の責任範囲かを明確にする必要がある。SaaSの場合、ユーザーが利用するシステムも事業者側の管理となるため、ユーザー個別のデータのバックアップを保証している場合もある。

 そのため、利用者側のバックアップ手段も定期的なデータエクスポートに限定されることがほとんどである。それに対し、OS単位で提供されるIaaSの場合、基本的にOSより上のレイヤは利用者の責任範囲となるため、OSやアプリケーションに起因するシステム障害などには利用者自身が対策を講じるというのが一般的な考え方である。

 IaaSの場合、利用者がシステムのバックアップをしたいという要件に対して、各事業者は、自社のストレージサービスと組み合わせたバックアップサービスをオプションで提供するのが定番であり、この場合、システムのバックアップ先や復元先、復元方法はその事業者のプラットフォーム内に限定されることが多い。

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