前編では、企業のクラウド利用の状況、ハイブリッドクラウドからマルチクラウドへ変遷していくトレンド、マルチクラウド時代のバックアップおよびデータ保護の重要性について説明した。後編では、マルチクラウドの利用に適したバックアップ・復元ソリューションについて説明していく。
どのバックアップ手法がマルチクラウド環境に適しているのか
前編でも触れたが、ユーザーによるバックアップが必要になるのはOS単位で提供されるIaaSであるが、どのようなバックアップ手法が適切なのか。現状、バックアップは「データ(ファイル)バックアップ」と「システムバックアップ」という2つの手法に大別される。
データバックアップはファイル単位やデータベース(DB)単位でのバックアップを実施する際に特定のバックアップ対象のみを指定でき、サービスによっては、アプリケーションデータを含めた複雑なバックアップに適しているものもある。
対して、システムバックアップは、OSやその設定、アプリケーションやその設定、ファイルやフォルダなど全てのデータをディスク丸ごとバックアップする。
システムバックアップの他にも、「OSまるごとバックアップ」「ディスクまるごとバックアップ」「イメージバックアップ」「ディスクイメージング」「スナップショットバックアップ」など、サービスによって呼び方は異なるが、ほぼ全て同じバックアップ手法を指している。
どちらのバックアップがマルチクラウド環境に適しているのか。大抵のIaaSの場合、「OSテンプレート」という標準的な設定が施されたWindows OSやLinux OSが用意されている。このOSテンプレートの初期状態から何もカスタマイズが発生しないのであれば、特定のファイルのみをバックアップするデータバックアップで事足りるだろう。
しかしほとんどの場合、どのようなシステムかによるが、ユーザーによるカスタマイズが発生するだろう。そうなると、システムバックアップの方がユーザーにとっては利点が多い。
まず、バックアップの設定において、OS丸ごとバックアップ対象として設定し、復元ポイントをどこに(日次や週次、数時間ごと)するかによってスケジュールを設定し、いつの時点のバックアップまでを残しておくかを決めておくだけで、標準的なシステムバックアップは実行できる。非常に簡単である。市場のシステムバックアップサービスはいずれもこのバックアップ設定の容易さを売りにしている。
そして、最大の利点はシステムの復元や復旧にある。システムバックアップはOS丸ごと、あらゆる設定まるごとのバックアップを取得した時点そのままに保存しているため、復元・復旧時にOSやシステムの再設定が発生しないのである。これにより、大幅な復元や復旧時間の短縮となり、目標復旧時間(RTO)もより短く設定することができる。