マルチクラウド時代のバックアップ手法とは(後編)--クラウドは主流になるか - (page 3)

古舘與章

2015-10-14 07:30

 結論としては、ローカル環境とクラウド、どちらのストレージにも同じバックアップデータを保存するのが、マルチクラウド環境で推奨される手法である。マルチクラウド環境においては、「システムバックアップ」「CD起動以外のシステム復元の方法を持っているか」「バックアップ先はローカル環境とクラウドどちらも選択でき、どちらにも直接バックアップをすることができるか」が製品やサービス選定の際に重要である。

クラウドへのバックアップは主流になるか

 今後、クラウドバックアップと呼ばれる製品やサービスが各ベンダーから発表され、OS丸ごとを取得するシステムバックアップが主流となることが予想される。いずれも共通しているのは、クラウドサービスで提供されるOS上にバックアップエージェントが必要である点だが、それ以外での違いは、バックアップの保存方法、保存先、復元方法にある。

 米国では、バックアップとディザスタリカバリの垣根がなくなりつつあり、オンプレミスにバックアップデータを保存しておくためのハードウェアアプライアンスを設置し、そのアプライアンスからクラウド上のストレージにデータをコピーする製品やサービスが多いと感じる。

 アプライアンスは設置しておくだけで初期設定も簡単と説明されがちだが、いざアプライアンス自体が障害となった場合には、通常、ユーザーが管理しているNASやSANと異なり、アプライアンスの提供元に頼るしかない。アプライアンスが故障している間にシステム復元が必要になった場合を考えると非常に悩ましい。

 また、マルチクラウド環境の場合、各クラウド環境にアプライアンスを設置することは非常に難しい。バックアップ対象のシステムの割合がオンプレミスよりもクラウドの方が多くなった場合、オンプレミスにアプライアンスを持つ効果も薄れてくるため、将来的にクラウド上のシステムの比率がオンプレミスよりも高くなるといわれている中堅中小企業にはあまり向かないといえる。

 ここでもやはり、バックアップ対象からクラウドに直接システムバックアップができるサービスに利点があると考える。

 ここまで、マルチクラウド環境に適したバックアップ・復元サービスについて説明したが、実際にはまだまだこれからの市場である。製品やサービスが定番化するまでは、ユーザーによってさまざまな製品やサービスが選定されるだろう。

古舘 與章
アクロニス・ジャパン株式会社 リージョナル プロダクト マネジャー
複数の回線キャリア、ISPにて法人向けサービスのプリセールスから新サービス企画・開発まで幅広く従事。当時の専門領域は、ネットワーク、モバイル、セキュリティ、クラウドで、金融、製造業向けの案件を主に担当。その後、2012年9月にアクロニス入社。コンシューマおよび法人向けバックアップ製品、法人向けモバイル、クラウドバックアップソリューション、新事業および新製品の立ち上げを担当。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. セキュリティ

    「デジタル・フォレンジック」から始まるセキュリティ災禍論--活用したいIT業界の防災マニュアル

  2. 運用管理

    「無線LANがつながらない」という問い合わせにAIで対応、トラブル解決の切り札とは

  3. 運用管理

    Oracle DatabaseのAzure移行時におけるポイント、移行前に確認しておきたい障害対策

  4. 運用管理

    Google Chrome ブラウザ がセキュリティを強化、ゼロトラスト移行で高まるブラウザの重要性

  5. ビジネスアプリケーション

    技術進化でさらに発展するデータサイエンス/アナリティクス、最新の6大トレンドを解説

ZDNET Japan クイックポール

自社にとって最大のセキュリティ脅威は何ですか

NEWSLETTERS

エンタープライズ・コンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]