情報通信白書を読み解く連載の4回目。前回に引き続き、本編第二部「ICTが拓く未来社会」を解説する。2015年の現状を踏まえて地域、暮らし、産業の3点についてICTがどう適用されていくのか。
ソーシャルメディアの発達
ソーシャルメディアの利用は順調に増加を続けており、Facebookのアクティブユーザー数は14億人に達している。単に量的な増加だけでなく、単なる情報交換の役割を超えてモノを交換する「シェアリング・エコノミー」や社会的影響を及ぼすほどになった「炎上」などのさまざまな実社会との接点を持ち始めている。
シェアリング・エコノミーとは、米国で主に広がっている、個人が持っている遊休資産の貸し出しを仲介するサービスである。例えば、空いた住宅や物件を貸し出しできる「Airbnb」や、車のドライバーと利用者をマッチングする「Uber」などが挙げられる。シェアリング・エコノミーの市場規模は2025年には335億ドルに達すると予測されている。また、個人間の取引となるシェアリング・エコノミーで問題となりうる信頼の問題を扱うレビュー評価サービスの「Prove Trust」などの副次的なサービスも産まれている。これらは、従来のホテルやタクシーなどでは手の届かない領域で便利なサービスを提供できるという利点がある。
海外におけるシェアリング・エコノミー型サービスの例 出典:「平成27年版情報通信白書」(総務省)
一方で、従来型のサービスと比べてシェアリング・エコノミーは大きく異なる。日本の消費者への利用動向のアンケート調査では、空き部屋型のサービスについて「利用したい」「利用を検討したい」が最も多い20代以下でも3割程度で、年代を追って少なくなり60代以上では2割弱にとどまっており、自家用車型のサービスについてはさらに少ない。理由については事故やトラブルへの対応に不安があることが6割以上と最も多く、信頼の問題について慎重になっていることがわかる。
国内でもシェアリング・エコノミー型のサービスは始まっており、駐車スペースを共有する「akippa」や、掃除・家具の組み立て、ペットの世話などを他人に依頼できる「Any+Times」といったものが挙げられる。こちらについても利用動向のアンケートが行われており、駐車場型については「利用したい」「利用を検討したい」が5割を超えた一方で、家事の依頼型は3割未満と、サービスの種類によって違いが見られる。利用したくない理由については、海外と同じく事故やトラブルへの不安が最も多かったが、サービスの内容がわかりにくい、手続きがわずらわしいなどの問題も多かった。
TwitterやFacebookでの投稿によって個人や企業が予期せぬ非難にさらされる「炎上」については、新聞で取り上げられる件数が2010年以降急増するなど社会的な影響が増えている。
SNSの基本的な利用については、Facebook、Twitter、LINEの利用率が3割以上と高い。Facebook、LINEでは実名が多く、Twitterでは少ない。トラブル経験については、全体の15.4パーセントにトラブルの経験があり、軽い冗談が人を傷つけた、誤解、けんか、個人情報の暴露などが多かった。情報発信に積極的なユーザーは11.3%と少ないが、他人の情報を「いいね!」や「リツイート」などで「拡散」するユーザーは、ほぼ毎日のユーザーで17.1%と多い傾向にあった。基準としては共感や面白さが多く、信ぴょう性はあまり重視されていなかった。
SNS上でのトラブル経験の内容 出典:「平成27年版情報通信白書」(総務省)
SNS利用の課題については、プライバシーや誹謗中傷、知的財産権、事実関係などの全てで気をつけているという割合が約9割を占めていた。悪ふざけの投稿などのSNSの不適切な利用については全体的にモラルに関する意見が多く、年代が上がるほどにモラルへの指摘が増えていった。SNSの特性、特に技術的にプライバシーが意図せず暴露される可能性への認知度は、20代以下で7割程度だったが、60代以上で3割程度と年代により差が見られた。