「情報通信白書」に見る情報通信政策の過去、現在(4) --社会全体のICT化と未来 - (page 2)

田島逸郎 2015年10月29日 07時30分

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テレワークなどの新しいワークスタイル

 ICTはさまざまな働き方を可能にしている。その代表格が場所にとらわれない「テレワーク」で、雇用型と自営型、在宅型とモバイル型(施設に依存しないか、所属事業所以外のオフィスで作業をするサテライトオフィス)に分類される。この他、不特定の人に業務を公募し委託する「クラウドソーシング」も急成長が見込まれている。


クラウドソーシングのイメージ 出典:「平成27年版情報通信白書」(総務省)

 テレワークは家族や地域に費やす時間を増やし、災害時の事業継続性、子育てや介護による離職への対応、地方での就労などさまざまな効果をもたらしうる。一方で、テレワークは2012年に急増したものの2014年にかけて減少しており、順調に普及しているとは言えない。この課題を探るべくアンケート調査が行われた。

 まず、認知度が企業、就業者ともに4割程度と少ないことが明らかになった。一方、就業者の利用希望は5割を超えており、自分に合った環境や通勤時間の短縮、子育てや介護との両立などの理由が挙げられた。利用したくない理由はPCなどの操作スキルの問題と、必要性がないことが挙げられた。

 企業側での導入に際した障壁としては、約4割が「テレワークに適した職種がない」と答えた。実際に職種によって導入率が異なり、営業や研究・開発・設計、顧客サポートなどで多く、人事・労務・総務、製造管理などで低い傾向にある。また業種によっても差があり、情報通信業で多く、医療・福祉で少ない傾向にある。期待される効果としては生産性・業務効率の向上が多く、課題としては情報セキュリティの確保、労務管理が多い傾向にある。課題に関しては、検討している企業で懸念されていることが導入済みの企業で問題になっていないものが多く、先入観が障壁になっているとも見ることができる。

さまざまな面で経済に寄与するICT

 ICTは、汎用技術(General Purpose Technology:GPT)であり、技術進歩の中でも決定的な役割を果たしている。日本の経済は少子高齢化・人口減少社会の中で、労働面・プロダクト面でのイノベーションが求められている。その中で、ICTは業務効率化、テレワークなどの労働参加拡大と質の向上、新たな市場の創造など今後ますます重要になると考えられる。実際に、ICT産業の経済波及効果は、特に付加価値誘発額において高水準を保っており、実質GDP成長率への寄与も一貫してプラスになっている。

各国のICT産業の動向と経営者の意向

 さまざまな領域にまたがり、それぞれの企業のあり方も大きく異なるICT産業の間の関係を見ていく上で、「情報通信白書」ではフランズマンの「新しいICTエコシステム」モデルを参考にしている。このモデルでは、ICT産業を3つのレイヤに分けている。その上で、インターネットの普及に伴い、レイヤ1、2の「ネットワークエレメント事業者」「ネットワーク事業者」からレイヤ3にあたる「コンテンツ・アプリケーション・プラットフォーム事業者」が重視されるようになったというのが大きな傾向である。

 ここ数年の傾向としては、端末などの下位レイヤーでは中国企業が台頭し、プラットフォームなどの上位レイヤでは米国企業が圧倒的なシェアを誇っている。その中で、ある意味で両者の中間にあると言える日本企業はスマートフォン向け部品・部材供給などを除き、苦戦を強いられている。

 各国のICT企業の経営者は現状についてどう捉えているのだろうか。情報通信白書では日本、米国、ドイツ、中国、韓国、インドについて比較を行っている。まず、レイヤー別の自国の競争力については、日中韓が通信、端末、デバイスなど下位レイヤー、米、独、印がサービス、プラットフォーム、コンテンツなど上位レイヤに競争力の高さを評価する傾向にある。自国のICT産業の強み・弱みについては、日本を含め各国が製品・サービスの機能・品質を強みに上げているほか、日本では技術力・研究開発力を挙げる割合が高い。弱みについては、日、米、独がコスト・価格競争力を挙げているのに対し、中韓ではブランド力を挙げている。

 国際協調に関しては、世界的に海外企業との連携・協調を重視する傾向にあるが、日本では自国内で連携・協調する意向が強い。日本企業との関係については、日本企業では中国企業との関係が強くなると認識しているが、中国企業は既に関係が強いと認識しており、ほかにはインド企業が日本企業との関係がこれから強くなると認識している。

 海外展開については、日本企業は海外展開の意向が低い傾向にあり、海外展開の方法でも世界的に直接投資が増えている傾向にあるものの、出遅れている。事業展開を多角化するか集中するかでは、世界的に集中のトレンドにあるが、日本は特にその傾向が強い。海外展開の点で今後有望な国については、欧州、中国などが多い傾向にあり、日本企業が最も注目しているASEANにも各国の注目が集まっている。有望な分野については、日本でクラウドへの注目が多いのに対し、世界的にはスマートタウン、スマートシティ、コンテンツ分野などにも大きな関心が寄せられている。

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