与那嶺社長も参加--日本IBMマラソン大会に見る社内コミュニケーションの意味 - 20/28

大河原克行

2015-10-19 16:08

 日本IBMは10月17日、東京都板橋区の荒川戸田橋陸上競技場と戸田橋緑地で「IBMマラソン2015」を開催した。時折、小雨が降るあいにくの天候だったが、午前9時のスタートにあわせて約530人の社員やパートナー企業、取引先関係者が参加。開会式では、ヨガ&フィットネススタジオ「Studio Beets」代表の山本華子氏の指導のもと、参加者全員で準備体操の後で、IBM BigBlueチアリーダーズによるスタート前応援も行われた。

 開会式では、当日まで明らかにされていなかった日本IBM代表取締役社長執行役員のポール与那嶺氏が登壇。「私も走ります!」と宣言。昨年は会場に訪れたものの、走ることはなかっただけに、ランナーとしての初参加に大きな拍手が沸いた。

 挨拶した同社ランニング部の部長を務める執行役員の吉崎敏文氏は、まるで事業方針説明会のように「全種目の参加者がイヤートゥイヤーグロースを達成した」と話すと、参加者からは大きな笑い声と拍手が沸き、「みなさん、グロースという言葉に敏感ですね」とさらに笑いを誘ってみせた。

 そして、前日に12月末での最高顧問就任が正式発表された取締役副社長執行役員の下野雅承氏も登壇。「何人からは“芸能界に転身ですか”という問い合わせを受けたが、そうしたことはない」と否定。「これからも全力で日本IBMをバックアップする」と語った。

 開会式から和気あいあいとしたムードでスタートした。

 マラソンは、走りきったタイムを競う「10kmマラソン」、1周約2kmのコースをリレー方式で1.5時間走り、周回数を競う「1.5時間耐久リレーマラソン」、親子のペアで完走した順位を徒競走方式で競う「親子ラン」の3つの種目を用意。与那嶺氏がスターターを務め、一斉に走り出した。

 10kmマラソンの完走者には完走証が手渡されたほか、各種目の1~3位を表彰。仮装賞、特別賞などが授与された。

 10kmマラソンの優勝者は、35分55秒で完走した鈴木裕也氏。女子の部は49.19秒のタイムを記録した加藤理恵氏。また、1.5時間耐久リレーマラソンの優勝チームは「赤いりんご」で22kmを走破。2kmのコースを11周したという。リレーマラソンでは、参加チームの3分の1が9周以上を走っており、3位から10位まではほとんど差がなかったという。与那嶺氏が参加したグループは7位と健闘した。

 10kmマラソン優勝の鈴木氏は、「参加するからには優勝を狙っていた」と語りながら、「チアリーダーたちの応援に元気をいただいた。最後まで笑顔で楽しく走ることができた」と語った。

 78位や104位のランナーも表彰されたが、これは日本IBMが今年78年目を迎えたこと、米本社が創立104年目を迎えたことにあわせた表彰だった。

 IBMマラソンの開催は今年で3回目。日本IBMとグループ会社社員だけにとどまらず、パートナー、取引先などにも対象を広げて実施しているイベントだ。日本IBMのランニング部が中心となって、約60人の実行委員会により自主的に運営されているのが特徴。ラップタイムの集計や完走証の発行などもすべて社員によって行われている。

 1年目は約100人が参加、2年は約400人へと拡大。そして、今回は500人を超える申し込みがあったという。閉会式で、来年の大会への参加を呼びかけたところ、参加者の間からは大きな拍手が沸き、来年の参加を誓う参加者も多かった。

自主的に集まれることを狙った

 吉崎氏は、「今年はあいにくの曇天だったが、それでも多くの参加者が集まり、マラソンを楽しんでもらえたのではないだろうか。新入社員や来年入社予定の内定者も参加し、事業部長や役員、社長と一緒になって走るユニークな機会になった」と語った。

 「IBMマラソンは、会社側が社員を強制的に参加させるようなるイベントではなく、参加したい人たちが自主的に集まって行っているイベント。かつて多くの企業で行われていた全社運動会のようなものでもない。今日の社長参加も事前に告知しなかったのは、それによって社員が強制されるようなことがなく、マラソンを楽しみたい人たちが自主的に集まれることを狙ったもの」(吉崎氏)

 日本IBMでは、吉崎氏などが中心となって、2007年にランニング部を設置。その後の活動の中で3年前からひとつの取り組みとしてマラソン大会を開催したのがこのイベントの始まりとなっている。

 吉崎氏は「部門を超えた親睦ができるようなイベント、あるいは社員がまとまるためのシンボリックなイベントが必要だと考えた。今回は、500人の規模となり、社長が初めて走ってくれた。自由闊達な日本IBMらしい文化のひとつとして、今後も開催したい」と大会の意義を語った。

 続けて吉崎氏は「もし他の企業で同じことをやりたいというものであれば、この開催ノウハウをオープンにして提供していきたい。すでに、しっかりとした運用マニュアルができあがっており、それによって運営している。今後も、誰でもが参加できるマラソン大会を目指したい。来年以降は、日本IBMグループ以外の多くの企業に参加してもらえるようなことも考えていきたい。狙うのは東京マラソンのような参加が自由なイベント」と大きな目標を掲げてみせた。

 与那嶺氏は、「2カ月前から今年は絶対走ると決めていた。だが、まったく練習する時間がなくて、今日は2kmを走ることができるのかどうかと緊張していた。2kmは遠い。社員にもどんどん抜かれていった(笑)。短い時間ではあったが、社員と一丸となり、一緒に汗を流して、いいチームワークを感じることができた。また家族が楽しみながら参加できたという点でも、いい機会だった」とした。

 実際、閉会式終了後には、与那嶺氏と一緒に写真を撮りたいという参加者たちが次から次へと押し掛け、与那嶺氏はなかなか会場を後にできないという結果に。その点でも普段は機会がない経営トップと社員が親睦を図るいい機会になったともいえよう。

 与那嶺氏の実父は、元読売ジャンアインツの外野手で、中日ドラゴンズの監督を務めた与那嶺要氏。今回のマラソンでは、その血筋を発揮するところまではいかなかったようだ。

 また、与那嶺氏は、「ランニング部には来年もグロースしてほしいと要望した。来年はぜひ1000人の参加者を目指してほしいと提案した。日本IBMは、どんな場面でもハイパフォーマンスカルチャーである」と笑いながら語った。

 Watson事業部長を務める吉崎氏に、今回のIBMマラソン2015へのWatsonの貢献を聞いてみたが、「それはまったく関係ない」と発言。「将来はWatsonを使って、この大会をよりスムーズに運営したい」と笑ってみせた。

2kmを走りきり、吉崎氏にタスキを渡す

2kmを走りきり、吉崎氏にタスキを渡す

ZDNET Japan クイックポール

所属する組織のデータ活用状況はどの段階にありますか?

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]