いまから始めるマイナンバー対応

中小企業のマイナンバー対応--間近にせまる収集業務を整理する - (page 2)

中尾健一

2015-10-22 07:00

通知カードのコピーで収集する方法

 従業員本人および扶養親族の通知カードのコピーを提供してもらう方法です。

 扶養控除等申告書のように扶養親族分のマイナンバーも従業員が記入して提出する場合、扶養親族分の本人確認は従業員が行うことになっています。つまり、扶養控除等申告書に記入された扶養親族のマイナンバーが正しく本人のものであること(番号確認)も、従業員が担保することになるわけです。

 特定個人情報保護委員会が8月6日にQ&Aの追加・更新を行いましたが、追加されたQ6-2-2では、以下のような質問と回答がなされています。

 「事業者に番号法上の本人確認義務がない場合であっても、書類に正しい番号が記載されているかを確認するために、事業者が扶養親族の通知カードや個人番号カードのコピーを取得することはできますか」という質問に対し、「個人番号関係事務においては正しい個人番号が取り扱われることが前提ですので、事業者は、個人番号関係事務を実施する一環として、個人番号カード等のコピーを取得し、個人番号を確認することが可能と解されます。」と回答しています。

 こうした質問の背景には、作成が義務付けられた書類に正しいマイナンバーを記載するために、収集時に扶養親族分のマイナンバーの番号確認も行いたいという、マイナンバーを取り扱わなければならない企業側の強いニーズがあることを物語っています。

 こうしたことも考慮すると、従業員本人や扶養親族の通知カードのコピーを提供してもらうことを収集方法とすることが合理的といえますし、支払調書で支払先となる個人事業主からも同様に通知カードのコピーを収集することで、方法の統一もできます。

 ただし、この方法を取る場合は、従業員ごとに通知カードのコピーを確実に保管するなど、紛失や漏えいリスクに備えた対策が必要となります。

マイナンバー記入シートで収集する方法

 一部のITベンダーが提案している方法として、独自のマイナンバー記入シートを従業員などに提供し、これに記載して提出してもらうことで、マイナンバーを収集する方法です。あくまでマイナンバー入力票として位置づけられている場合は、マイナンバー管理システムに入力後は、記入シートは破棄するように提案されているベンダーもありますが、その取り扱いは企業の側に任せられているのが、実際のようです。

 マイナンバーが記入されることで厳重管理が必要な書類を増やさないという観点では、マイナンバー入力後記入シートはすみやかに廃棄すれば良いわけですが、のちのちマイナンバーが正しく本人のものであるか確認する手段がなくなってしまいます。その点を考慮すると、廃棄するかそのまま保管しておくか悩ましいところです。

紙ベースで収集して保管も紙ベースで行う方法

 この記入シート、ITベンダーがマイナンバーの入力用に提供するものとは別に、紙ベースで、従業員および扶養親族や支払調書の支払先となる個人事業主からマイナンバーを取得・保管する商品が、中小企業を中心に売れているようです。ITでマイナンバー管理に対応するコストやPCなどで管理する場合に安全管理措置にかかるコストなどに比べ安価に対応できることや、データという直接見ることができない管理に比べて紙での書類管理という直接見ることができる分かりやすさから、売れているようです。

 もともと、給与計算から年末調整、源泉徴収票の作成まで手書きで紙ベースでやっているのなら、マイナンバーも紙ベースで取得・保管するという発想になることは、うなずけない話ではありません。しかし、取得、保管、利用、提出とすべてが紙ベースでは、あらゆるシーンで紛失や漏えいなどのリスクがあります。

 また、給与計算や源泉徴収票などの作成に給与ソフトを利用している場合にこのようなツールを使用すると、一方で給与ソフトを利用してマイナンバーをPCに登録、管理することになり、PCと書類とで二重に保管・管理することになり、安全管理面で余計に気を使わなくてはならなくなります。

 紙ベースのマイナンバーの取得・保管用の商品が売れている背景には、まだまだ手書きで給与計算を行っている中小企業があること、PCで給与ソフトを使っているような中小企業でも、物理的安全管理措置や技術的安全管理措置をどこまで講じれば良いか、よく理解できていないからのように思われます。

 安易に分かりやすいからと書類での管理に流れるのではなく、中小企業でも手の届く範囲で、ITを活用したより安全なマイナンバー管理のシステムを活用することをお勧めします。

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