クラウドで信頼できるサービスを構築するための評判システム--研究者らが提案 - (page 2)

　Seitはクラウド管理システムに統合され、さまざまなサービスの評判を追跡するのに利用される。

　Seitは、クラウドベースのサービスにSeitの評判マネージャとのインターフェースを提供する。この評判マネージャは、クラウドベースのサービスやテナントに付与された評判レーティングのリポジトリだ。このレーティングは、それらのサービスの過去の振る舞いに応じて付与され、これらのサービスが依存するインフラコンポーネント（ファイアウォール、負荷分散装置、ネットワークコントローラなど）からのアラートやイベント、ステータスアップデートなどの情報から自動的に生成される。

　この仕組みでは、異なるオンラインサービスが相互作用の準備をしている段階で、Seitに問い合わせを行い、クラウドソーシング的に生成されたお互いの評判を調べる。各サービスはこの情報を利用して、お互いの評判や期待に基づき、どのように相互作用するか、あるいは相互作用すべきかどうかを判断することができる。

　クラウドサービスがこの評判共有メカニズムを利用できるようにするため、Seitはクラウドインフラコンポーネントの周囲にソフトウェアのshim（API呼び出しを透過的にインターセプトするライブラリ）を作ることを可能にするフレームワークを提供している。このshimは、クラウドサービスやテナントが、Seitの評判マネージャとのインターフェースを作れるようにするものだ。

　同論文によれば、Seitは問題を起こす可能性があるクラウドサービスやテナントを分離しやすくすると同時に、サービス間の通信を最適化する。

　評判は、クラウドサービスやテナントが相互にやりとりするたびに更新されるため、Seitは悪意のある振る舞いや問題のある振る舞いが発生すると同時に警告を送ることができる。例えば、2014年に発生したAWS ECのインスタンスに対して発生したサービス妨害（DoS）攻撃に似た攻撃を再現してみたところ、Seitは対象となった仮想マシンの評判を下げ、それらのインスタンスが攻撃を分離できるところまで大量のDoSトラフィックを排除した。

　研究者らは、Seitの使用場面についてさまざまな例を提示している。これには、評判が低い仮想マシンからのネットワークトラフィックをブロックまたは選別するSDNコントローラを作成するケースや、クラウドサービスブローカーによってCloud Foundry上で提供されるサービスを評判によってフィルタリングするケース、評判を利用した負荷分散装置を作るケースなどが含まれている。

　論文には「われわれはエミュレーション環境を使って、Seitが悪意のあるテナントを分離することによりセキュリティを向上させること、セキュリティを損なうことなくインフラを適応させることによりコストを下げられること、評判を用いたサービス発見を可能にすることで高品質なサービスプロバイダーの収益を向上させられることを示した」と記述されている。

　IBMとそのパートナーは、Seitをさまざまなクラウドやネットワークコンポーネントでテストしており、これには「Floodlight SDN」のコントローラ、Cloud Foundry、「HAProxy」の負荷分散機、Snortの侵入検知システム、Nagiosの監視システムなどが含まれる。

　今後は、より多くのコンポーネントをSeitに統合し、システムの性能を向上させ、さまざまな場所にある自律的なクラウド間にまたがる大量のコンポーネントやテナントを管理しようとする際に発生する、規模の問題について研究する計画だという。