クラウド型のフィールドサービス支援事業を展開する米ServiceMaxの日本進出を機に、最高経営責任者(CEO)のDavid Yarnold氏が来日した。Yarnold氏に、フィールドサービス支援市場について聞いた。
「グローバルでおよそ180億ドル(約2兆円)の規模があると考えています。日本は世界市場の中でも、サービスや製品の品質に対して最も高い水準を求める国の1つです。そのレベルを維持しているのは優秀なフィールドエンジニア。当社はその人たちの業務を支援する優れたサービスを提供できます」
米ServiceMaxの最高経営責任者(CEO)、David Yarnold氏
サービスマックスのサービスは、Salesforce.comのForce.comプラットフォームをベースにして、製造、建設をはじめとするフィールド業務が発生するあらゆる企業の業務支援を提供する。同社は2007年創業の若い企業だが、すでに総額249億円の資金調達を完了しており、各方面から大きな期待が寄せられている。
今回の来日会見では、トプコン、SCREENグラフィックアンドプレシジョンソリューションズ、テクノ・トッパン・フォームズの国内3社の導入が発表されている。
「のびしろ」の大きい市場
Yarnold氏は、今後日本市場での売り上げが同社の売り上げ規模の10~15%に成長すると見込んでいると話す。日本市場はそれだけ有望な市場なのだ。調査会社ITRの調査によると日本のフィールドサービス支援市場は高い成長率は示しているものの、全体としてはおよそ40億円規模にとどまっている。
2兆円といわれるグローバルでの市場規模には、潜在的な需要を含んでいると考えても、その5%として1000億円になる。つまり「のびしろ」が膨大に存在する市場なのだ。
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2兆円という数字は、グローバルでのCRM(顧客関係管理)市場の規模に匹敵するものだ。世界には、2000万人のフィールドエンジニアがいるとされているが、これらの人たちの業務にどれだけ投資すればCRM市場と肩を並べることができるのか。単純計算すればフィールドエンジニア1人当たり10万円を投資することになるが、投資対効果をどれだけ上げられるかが、今後の市場の成長に大きく影響する。
フィールドサービス業務を効率化させるには、エンジニアの稼働率を高めることが重要になる。一度の現場での作業でできるだけ多くの問題を解決し、しかもサービスレベルを向上させていけば、新たな顧客獲得にもつながっていく。フィールドサービス支援が注目されている理由はここにある。
フィールドサービスの種類は業種によってさまざまあるが、全体に手戻りの発生が多い。つまりある問題を解決したり、点検をするといった作業のために、何度も作業員が現場に向かうことが意外と多いのだ。どうしても必要なら仕方がないが、現実には、情報共有がうまくできていない、作業員のレベルにばらつきがある、といったことからムダな動きが発生するケースが多い。
3度の現場訪問を合計4人のフィールドエンジニアで実施してようやく問題解決した、という案件を1度の訪問で1人のエンジニアで解決できれば当然稼働率は高くなる。こうしたことを実現するのがフィールドサービス支援のITなのだ。
効果測定をモニタリングしユーザーの成長をうながす
とはいえ、フィールドサービス支援系のシステムを利用しているユーザーからは「作業効率が上がった」「管理がしやすくなった」という声が聞かれると同時に、「現場のエンジニアが積極的に活用してくれない」「成果測定がうまくいかない」といった意見があることも事実だ。
日本法人の代表、垣貫己代治氏は次のように話す。
「サービスマックスは導入効果にとても神経を使っています。別途料金の発生するコンサルティングサービスもありますが、その前に営業活動の一環として、導入先企業での効果測定を支援しています。日本基準のサービスを提供するために、日本の顧客に対して、当社のテクノロジがいかに貢献できるかは重要な課題です」
Yarnold氏は、ServiceMaxが独自のアルゴリズムを採用して構築した「効果測定システム」について話す。
「当社は、GEやソニー、Coca-Cola Enterprisesなど大手企業を含め、世界で500社が導入しています。そのため、導入効果のモニタリングはわれわれのビジネスにとって不可欠なものなのです。より完成度を高めるために年に2度のシステム改善を実施しているので、ユーザーの意見はとても大切です。従業員満足度、コスト、SLA、使用感などの項目についてインタビューし、その結果を独自のシステムで測定しています」