――クラウドによって、ビジネスモデルも変化している。システムインテグレーターの新たなビジネスモデルは。
例えば、国内企業とグローバル企業でも話は変わってくると思います。ネットワンではグローバル展開している企業にはまだ100%の対応ができていませんが、この1年でシンガポールを中心としたアジア地域でのビジネスを一緒に手掛けるケースが増えました。郷に入っては郷に従うといいますが、シンガポールの法律に長けた日本のSIerはほとんどいないのが現状です。
そういった意味でネットワンは現地の方々とコラボレーションしながら、数カ所の金融機関と連携し、今春以降は実際の構築、設計、デザインに入っています。その経緯で、納品は現地を通していきましょうなど、コラボレーションが重要になって、また日本の金融機関も現地採用をしていくでしょうから、言語対応も必要になります。さらに、日本のキャリアも海外展開を推進しており、ご指名でわれわれが北米やアジア、ヨーロッパで現地調整、現地調査、調整、インストールを全部請け負うケースも増えてきました。そうした海外展開の方向性はあると思います。
――クラウド事業でのコンサルに領域を広げていき、グローバル企業の現地法人をサポートすると。
いえ、そこはあくまで次のステップのためのものです。これからの3年間を考えたときに、ひとつの新たな事業領域はIoT(モノのインターネット)ですね。IoTにより大量に発生するデータをクラウドに貯めて、それを分析していく。これは製造業の改善や効率化などにも有効だと思います。
例えば、ビルの駐車場の空き状況をスマートフォンで確認できるケースが増えていますが、これからはそれが地域全体に広がっていくと思います。特定の地所の駐車場の空き状況やお店の情報などが、丸の内界隈というエリアでチェックできる。これは駐車場のセンサ情報に基づいたものですね。
ただ、そのような取り組みは不動産事業者がやるよりも地方自治体がやった方が効果が高いと思います。地方自治体が公共サービスを充実させて、隣の街から住人を引っ張り込むようなことをしていかないと、商店街も活性化していきません。それを実現するためには、IoTとクラウド、ビッグデータが重要になると思います。一方、データをそろえても分析してそこから知見を得るのは容易ではありません。そのような分析から知見を得る役割をになうため実験をスタートしようというのが、今年のネットワンのテーマのひとつです。
ただ、そのためには顧客その先にいるエンドユーザーが何をしたいのかについて、時間をかけて議論する必要があります。分析ツールはいくつもありますし、クラウドもある意味ツールです。それらをつないで何をしたら顧客が喜んでくれるのか。IoTで集めたセンサデータを解析した先に、製造業であればユーザーのニーズを瞬時に把握し、そこに対応する製品を作れるようにすることが一例です。多品種少量生産のバリエーションが可能になるかも知れません。