Dellの最高経営責任者(CEO)Michael Dell氏は、Dell Worldの基調講演で「世界の新たな理論」を説明すると約束していた。だが、実際には必ずしもうまくいったとは言えない。
そのかわり、Dell氏は同社が行う670億ドル規模のEMCの巨大買収の利点に関して1時間以上を費やし、買収後の会社が市場にもたらす数多くの製品やサービスや、主な戦略について述べた。
その際、同氏はかなり強烈な表現を使っている。同氏はDell Worldの聴衆に対し、「われわれは、向こう20年から30年の世界のインフラを構築する。ガンは治るようになる。世界には食糧や水が行き渡る。世界規模で、希望とチャンスが生み出される」とまで語った。
7つの目標
「夢のコンビ」であるDellとEMCは、デジタル革命、モノのインターネット(IoT)、ソフトウェア定義データセンター、ビッグデータアナリティクス、ハイブリッドクラウドコンピューティング、モバイル、セキュリティの7つに力を入れるという。
またDell氏は、EMCがFotune 1000企業から「ほかに並ぶものない評判」を得ている一方、Dellも小~中規模企業の市場での強みを持っているとも語った。
同氏は、EMCは新たなテクノロジを育成することについては業界随一だと宣言した。さらに同氏によれば、買収後の会社は、EMCの企業連合によるビジネス構造を引き継ぐという。
この買収はテクノロジ業界史上最大のものであり、これによりEMCは非公開企業になる。非公開企業になることのメリットは、公開企業が常に受けている、売上高と利益への圧力にさらされることなく、イノベーションの開発に力を注げることだと言われている。
Dellは、これが本当であることを示す証拠として、1つの興味深い統計を挙げた。Dellの特許申請件数は2014年に前年比で27%増加しており、これは同社の新記録だという。また、同社が持つ登録特許と申請特許は、合わせて8000件以上あるとした。
結論
この基調講演は、製品に関する情報が多く、壇上でDell氏とMicrosoftのCEOであるSatya Nadella氏のくつろいだ会話や冗談が飛び交う雰囲気のよいものだったが、将来へ向けての青写真は語られなかった。
Dell氏が語ったビジョンが実現するかどうかは、EMCの買収と統合が成功することにかかっているが、その仕事はまだ始まったばかりで結果は出ておらず、伴うリスクも大きい。
にもかかわらずDell氏は、顧客が最も気になっている疑問のいくつかには答えなかった(公平を期して言えば、答えなかったというよりは答えられなかったのだろう)。例えば、製品の合理化や重複をどうするか、両社の文化をどのように溶け込ませるか、営業やサポートの運用は変わる可能性があるのか、といったことだ。
また、ほかにもDell氏の語った戦略の要約から抜けていたものがある。エンタープライズアプリケーションについての実質的な議論だ。もちろん、DellもEMCもエンタープライズアプリケーションの分野では核となるような製品を持っていないのだが、DellとEMCが追求しようとしている戦略的な領域が、台頭しつつある次世代のエンタープライズアプリケーションを下支えするものであることを考えると、このことには少し驚かされた。ただし、1回の基調講演には大きすぎるテーマだったのかもしれない。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。