OpenStack Foundation 最高執行責任者(COO)Mark Collier氏
オープンソースのIaaS構築基盤ソフトウェア「OpenStack」に関する国際会議「OpenStack Summit Tokyo 2015」が、10月27日~30日に東京・品川で開催された。2日目の基調講演では、サミットを主催するOpenStack Foundation 最高執行責任者(COO)のMark Collier氏が、OpenStackコンポーネントの全体像を説明した。
OpenStack Foundationは今回のサミットで、複数コンポーネントで構成されるOpenStackの「コア」に位置付けるものを再定義。各コンポーネントを(1)OpenStackの中核をなす「コア」、(2)コアにぶら下がる「Big Tent」――に分類した。
コアには、「Nova(コンピュート)」「Neutron(ネットワーキング)」「Glance(イメージ管理)」「Keystone(認証)」「Cinder(ブロックストレージ)」「Swift(オブジェクトストレージ)」の6つが含まれる。
COREを取り囲むBig Tentとして、「Heat(オーケストレーション)」「Sahara(データプロセッシング)」「Congress(ガバナンス)」「Magnum(コンテナ)」「Ceilometer(メータリング)」「Ironic(ベアメタルプロビジョニング)」「Murano(アプリケーションカタログ)」「Horizon(ダッシュボード)」「Minstral(ワークフロー)」「Trove(データベース)」のコンポーネントが位置づけられる。
OpenStackコンポーネントのコアとBig Tent
「われわれは、COREに位置づけた6コンポーネントにフォーカスして、安定性、信頼性、アップグレードの容易性、スケーラビリティの向上につとめている。この取り組みにより、COREとそれを取り巻くBig Tent全体の利用を拡大していきたい」(Collier氏)
Libertyで最も開発投資をしたのは「Neutron」
Collier氏は、10月15日にリリースしたOpenStackの最新バージョン「Liberty」で、最も多くの企業が投資し、最も活発に開発されたコンポーネントは「Neutron」だったと説明した。「ユーザーアンケートの結果、すべてのOpenStackプロジェクトのうちNeutronを使っている割合は、2014年は68%だった。これが2015年には89%まで急拡大した」とCollier氏。
その背景には、SDN市場の成長がある。Neutronは、LBaaS(Load Balancer as a Service)、 VPNaaS(VPN as a Service)、FWaaS(Fire Wall as a Service)、テナント分割、分散ルーティングなどのネットワーク機能を提供するほか、プラグインを通じてSDNコントローラなどの外部ネットワーク製品と連携する。
「SDN市場は、サーバ仮想化市場の2倍のスピードで成長しており、マーケットの規模は100億ドルに近づいている。ネットワークベンダーは皆この100億ドル市場を狙っているわけだが、ネットワークベンダーのトップ5がSDNのコアに“OpenStack”を選んでいる。OpenStackはSDNのデファクトスタンダードだ」(Collier氏)
NTTレゾナントがNuetron導入事例を紹介
NTTレゾナント 取締役取締役 西山敏雄氏
Neutronをプロダクト環境で使っている国内ユーザー企業として、NTTレゾナント 取締役取締役の西山敏雄氏が登壇した。同社は2014年4月に、ポータルサイト「goo」のサービス提供基盤にOpenStack Icehouseを試験導入。2014年10月から本番環境での運用を開始した。現在は、OpenStackベースのプライベートクライドで1800台以上の仮想マシンが稼働する。
「プラットフォームの安定性と、将来のアップデートの際の利便性を優先し、自社でコンポーネントに多くの修正を加えないというのが導入のポリシー。そのため、RDO(Red HatのOpenStackユーザー支援コミュニティ)が提供するパッケージを使用している。Neutronも、その中のコンポーネントの1つとしてネットワークコントロールに使っている」(西山氏)
同社は今年度、OpenStackのバージョンをIcehouseから次期「Mitaka」へアップデートする計画だ。このシステム改修に合わせて、現在使っているハードウェアのロードバランサをNuetronへ移行する予定だという。