セブン&アイCIOが語る情報戦略――ビッグデータより人のデータ - (page 2)

末岡洋子 2015年11月12日 07時00分

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マルチカンパニー、マルチベンダーの一大プロジェクトの道のり

 だが、ここに至るまでは長い道のりだった。鈴木氏は1999年に当時勤務していたソフトバンクで、現在のセブンネットショッピングの前身となるサービスを展開。2009年には売上高186億円を到達するという成長を収めた。鈴木氏には、「これからはネットだけじゃない時代がくる」という確信があったという。

 2006年に会社ごとセブン&アイに移り、ネットショッピング事業の再編を進めるが、会員IDの統一などやりたいことはあっても、各事業会社を説明するのに手間取った。転機が訪れたのは2013年8月末だ。半年に1回の戦略会議で、トップを巻き込んでオムニチャネルの取り組みを進めることが決定した。セブン&アイHDの投資としてやっていくにあたり、鈴木氏自らも子会社のセブンネットショッピングからセブン&アイHDに移る。

 体制が整った後は、システム面での作業がはじまる。顧客IDの統一化、ビジネスモデルのとりまとめ、グループとしての統一化を図るなどのことを進めたという。難しかったのは、複数の企業が関わる複雑なプロジェクトだったという点だ。

 セブン&アイの事業会社7社、開発会社は13社――「取りまとめていくのが一番の苦労だった」と鈴木氏。「約1年を要件定義に費やした。その後残りの1年1カ月ぐらいで、なんとかカットオーバーに」と鈴木氏は振り返る。ここでOracleの協力は大きかったようだ。

 今回のプロジェクトでセブン&アイは、カスタマーサービス業務でSaaSの「Oracle Service Cloud」、データ管理「Oracle Exadata」「Oracle Database」、データ分析「Oracle Big Data Appliance」、バックアップの「Oracle ZFS Storage Appliance」、Oracle製品の一元的な運用管理「Oracle Enterprise Manager」など多数のOracle製品を利用した。

 主にネット系の仕組みの部分となるが、以前から基幹系でOracleの技術を採用しており、セブン-イレブンの店舗のストアサーバでOracleのデータベースが動いていた。これらとの親和性が高いという点は大きな魅力だったようだ。もちろん、グループの方針である信頼性を満たすことは重要要件であり、速度などのパフォーマンスも他社技術とベンチマーク比較をしたという。

 だが、採用の決定的要件となったのは「人間関係」という。「Oracleがどこまで協力してくれるのかという不安材料があった」という鈴木氏、実際にLarry Ellison氏に会い、思いを伝えたという。その結果、「いままでのOracleのイメージが吹き飛ぶような万全の体制でやっていただけた」と笑う。

 今回のプロジェクトでは、米国側でも技術者が動いてくれたそうで、日本ではシステムインテグレーターが間に入ることが多いが、「システムインテグレーターを使いながらも、直接米国と話をしながら進めることができたのがよかった」と評価した。

トップにセキュリティへの意識を

 セキュリティはどうだろうか? もちろん細心の対策を取っているようだ。「ネットにつながるという点でセキュリティは一番怖い。グループを挙げて本格的にやっている」と鈴木氏。ISO27001の取得、EV SSL証明書の対応はもちろんのこと、組織面では情報管理室を作った。全ての情報を管理する部署となり、鈴木氏が率いる情報システムを「けん制」する役割となる。

 何かあった時のために、緊急対応体制も整備した。どのように警察など関係当局と話をするのかなどをシミュレーションしており、代表取締役社長最高執行責任者である村田紀敏氏にセキュリティ事件発生を想定しての記者会見のリハーサルもしてもらったとのこと。

 「起こってもらっては困るが、起こったときのため。トップもその意識を持つことが必要」と鈴木氏は言う。効果があってか、グループ全体での意識は高まっているという。サイバーセキュリティへの意識がリアル側にも拡大し、店舗での伝票の取り扱い方に対する注意も高くなったとのことだ。

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