しかし、Kalanick氏の主張を鵜呑みにした聴衆はほぼゼロだろう。Uberはタクシー業界のイノベーターとして注目されていると同時に、ビジネスの進め方には批判も少なくない。
最近、同社は立て続けに契約運転手から訴訟を起こされている。Uberの運転手は、従業員ではなく請負契約業者扱いだ。そのため、保険や社会保障は一切適用されない。その一方で、顧客がドライバーを評価する「ランキング」のレートが一定以下になったり180日間連続でUberのドライバーとして働かない場合は、契約を一方的に解除(アプリの失効)されたりという“制裁”がある。
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既存のタクシー業界からは「タクシードライバーの雇用を奪う」といった反発も上がっている。そもそも、Uberのビジネスモデルそのものが、法律に抵触する国もある。さらに、Uberの企業倫理を疑問視する声も挙がっている。
2014年11月には同社幹部が、同社に批判的なジャーナリストに対し、「個人のプライバシーを暴露する」と暴言を吐いたと報じられた。実際、Uberの個人情報管理は徹底されておらず、Uber社員が顧客の個人データにアクセスできる状態だったという。
今回のトークセッションではKalanick氏がこうした批判に答えることはなかった。唯一、「Uberの普及で既存のドライバーの雇用が失われる可能性あるのか?」というBenioff氏からの問いに「新たな技術と革新的なサービスが浸透する段階においては、常に課題が発生する。しかし、長期的視点で見れば、新しい技術やサービス、思考を受け入れるための必要な通過点だ」と述べるにとどめた。