ハリウッド女優とYouTube CEOが語る「育児とイノベーションと私」 - (page 2)

鈴木恭子

2015-11-04 07:30

「企業の70%は“有給の産休は企業側に有益だ”と感じています」Wojcicki氏

 Wojcicki氏は16歳を筆頭に5人の子どもがいる。同氏は2015年、Forbes誌で「世界で最もパワフルな女性」の12位にランキングされるほど、米国では“スーパーキャリア女性”として知られる存在だ。しかし、そんなWojcicki氏も、16年前の第一子出産時には、「『産休中は無給』が当たり前で、早く職場復帰することしか考えていませんでした」と当時を振り返る。

Susan Wojcicki氏
YouTubeでCEOを務めるSusan Wojcicki氏。第一子は16歳、第二子は15歳で11カ月違いで授かった。King氏の「ずいぶん年が近いのね」というツッコミに対し、「バースコントロールをミスったの」と事もなげに回答。無敵です

 ある調査によると、出産後10日で職場復帰する女性は、産休を取得した女性の25%、復帰を急ぐ主な理由は「仕事を失う恐怖がある」「経済面からも復帰せざるを得ない」だ。Wojcicki氏は「こうした考えが蔓延していることは、女性にとっても企業にとっても不幸なことです」と指摘する。

 翻ってGoogleの産休や育休は18週間で、父親は12週間まで取得できる。もちろん、有給だ。Wojcicki氏は「長期の産休、育休制度を導入したことで離職率が下がり、人材確保のコストも削減できました。企業の70%は『有給での産休、育休制度は企業側にとっても有益だ』と感じているとの調査結果もあります。実際、カリフォルニアでは有給の産休を制度化しました。人材は資産であり、よい社員を維持したい会社ほど充実した産休、育休制度を積極的に導入しています」と説明する。

 Alba氏の会社も2016年から16週間の産休、育休(有給)制度を導入する予定だ。「スタートアップなのにリスキーでは?」との問いにAlba氏は、「会社の文化を確立するために(制度を導入は)必要な投資です。自分の経験から考えても、産後10日で仕事のパフォーマンスは出せません」と語る。

 さらにAlba氏は、子どもをがいる人材を積極的に雇用しているとのことだ。これは福祉的観点ではなく、ビジネス的観点からだという「特に子どもを持つ母親は労働時間に制約があります。だから、マルチタスクで時間を有効に使う人が多いのです。仕事に費やす時間と生産性は比例しません。これは自戒も込めての実感です」(Alba氏)

「挑まなければ、成功はありえない」Alba氏とWojcicki氏

 ただし、根本的に課題もある。そもそも、技術系企業には女性の従業員自体が少ない。米国でもコンピュータサイエンスの学位を持っている女性は、同学位保持者の18%であるという。さらに学位を持っている女性が技術系企業に入社するとは限らないことから、技術系企業は慢性的な女性不足になっている。


Alba氏はほぼ毎日出勤し、商品企画からカスタマーサービスまで「すべての部門に携わって話を聞くようにしている」という

 Wojcicki氏もAlba氏も「オンラインビジネスやコンシューマーを対象にしたサービスを展開している技術系企業は、多様性を求めています。特にオンラインで買い物するのは女性の方が多い。消費者目線でのインターフェース開発や新サービスを考案するには、女性の力が不可欠です」と口を揃える。

 そうした課題を解決するためには何が必要なのか。

 Wojcicki氏は労働環境の改善のほか、義務教育課程からコンピュータサイエンスを必須科目にするなど、「教育の一環にコンピュータに関する授業を取り組み、(コンピュータサイエンスは男性が得意という)ステレオタイプな考えを払拭することです」と指摘する。

 Alba氏も「技術は人間のクリエイティビティを支援するものです」と同意する。実際、7歳になるAlba氏の長女は、子ども向けのコーディングキャンプに参加し、メイクアップアプリを作成、アプリを「87ドルで売りたい」と言い出したそうだ。

 「女の子だから(コーディングは)できないと思っているのは間違いです。最初の一歩を踏み出す環境がないだけなのです。コーディングの楽しさを知れば、自分のアイデアでほしいアプリを作るでしょう。その楽しさを知らせたい」(Alba氏)

 最後に、仕事で成功するアドバイスを聞かれた両人は、「失敗の回数を恐れないで。挑まなければ、成功はありえない。好奇心とチャレンジ精神があれば、失敗から多くのことを学び、成功に近付けるのです」と語り、パネルを締めくくった。

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