「例えば、IBMとの提携前、The Weather Companyが擁する保険業界の顧客は10社だった。しかし、提携後に顧客数は急増しており、2016年4月には50社になると予測している。小売業に至っては、提携前の顧客数はゼロだったが、こちらも2016年4月までに50社の新規顧客を見込んでいる。さらに、水やガスといった公共のユーティリティ分野や鉄道、地上交通などIBMの既存顧客にもリーチできる。提携してから7カ月経ったが、その間に100超のビジネスチャンスを得られた。その半数以上は、北米外に籍を置く先進国の大規模企業だ」(Gildersleeve氏)
「ビジネスインサイトをすべての顧客に提供し、ビジネスをトータルでコンサルティングする」という戦略方針を掲げるIBMにとって、The Weather Companyが持つ気象データとその関連資産は、他社との差別化要因になる。「気象データを必要としない業界はない。それが業界に最適化された情報として提供されれば、そのニーズは大きい」(IBM関係者)と語る。
10月26日のゼネラルセッションではThe Weather Companyで最高経営責任者(CEO)を務めるDavid Kenny氏が登壇。IBMとの提携強化を強調していた
天候情報を運転行動連動型保険に生かす
買収発表の翌日、両社は英国に本社を置くテレマティクス保険サービスプロバイダーのOctotelematicsが両社の情報と分析技術を活用したモバイルアプリ「Octo U」をリリースしたと発表した。Gildersleeve氏は「The Weather CompanyとIBMが“提携強化”したことで生まれた新たなサービス」と評する。
Octo Uは、全地球測位システム(GPS)に基づく独自のアルゴリズムで距離情報を収集、分析し、毎回の走行をスピード、ブレーキ、加速などの要因に応じて評価するアプリ。運転行動連動型保険(利用ベース保険)の保険料をドライバーの行動に基づき個別に算出するものだ。今回、同アプリにThe Weather Companyの天気情報が追加された。これにより、ドライバーを評価する際、天候によって影響される道路状況や渋滞などの外的要因も考慮されるようになった。
ドライバーの運転状況に連動した運転行動連動型保険は市場に存在するが、最新の道路状況情報や天候データまでを加味した自動車保険は珍しい。Gildersleeve氏は「ドライバーの運転技術をより正確に把握できることで、適切な保険商品を提供できる」と語る。
英Octotelematicsのウェブサイト。ドライバーの運転状況に連動した運転行動連動型保険に最新の道路状況情報や天候データを加味することで、より詳細なサービスが提供できるとしている
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今回の買収は、The Weather Companyの企業向け部門に限定だ。実は、同社はAmazon Web Services(AWS)のヘビーユーザーとしても知られている。買収後、AWSとの関係はどのように変化するのだろうか。Gildersleeve氏は、「(クラウド利用の)業務内容ごとにIBMとAWSを使い分けている」と説明する。
現在でも、いくつかのアプリはAWS上で運用しているが、「ビジネスアプリの一部は、IBMクラウドで運用している。企業向け部門のビジネスアプリはIBMだけで運用しているで、今回の買収でAWSとの関係を打ち切ることはない」と語っている。