また同氏は以下のようにも述べた。
「多くの企業は、PCとサーバであるか、あるいはサーバとストレージであるかにかかわらず、1社からまとめて製品を購入したいと考えている」
「どのアプローチが優れているかについてはさまざまな意見がある。時が経てば分かるとはいえ、われわれは勝利に向けたアプローチを選択していると考え、満足している」
新たなビジネスでは、ハードウェア製品に加えて、EMCが所有するRSAの製品やDellの「SecureWorks」によるセキュリティ関連製品の販売とともに、EMCやPivotal(VMwareからスピンアウトした企業)を通じたビッグデータ関連のソフトウェアやサービスの販売に重点を置くことになる。
クラウド分野の主役になる
今回の買収における最も重要な側面はおそらく、仮想化分野の大手企業であり、株式公開企業として存続し続けるVMwareの企業支配権をDellが手に入れるところにある。新生DellはEMCのハードウェア関連ポートフォリオを武器にするとともに、企業が購入したいと考える数多くのクラウド構築コンポーネントを販売できるようになる。
ただ、企業がパブリッククラウドへの緩やかな移行を選択し、自社インフラの構築を図ろうとする流れが今後どのくらい続くのかは分からない。DellはEMCを買収した後、Amazon Web Services(AWS)やGoogle、Microsoftといった大手パブリッククラウド企業と競合することになる。これらのパブリッククラウド企業は主に、Hewlett-Packard(HP)やEMCといった従来からあるエンタープライズ向けOEMメーカーからではなく、低価格のホワイトボックスサーバ製品を開発しているメーカーからハードウェアを調達し、自社でカスタムソフトウェアやサポートを用意してクラウドプラットフォームを構築している。Credit Suisseの試算では、AWSの売上高が1ドル増加するたびに、既存ITベンダーの売上高が4ドル減少しているという。
大手クラウド企業はホワイトボックスサーバ製品を好んでいるという現状があるにもかかわらず、Dell氏は「われわれは、かなりの台数をサービスプロバイダーに販売している」と述べたうえで、Dellはパブリッククラウドとプライベートクラウドをミックスしたプラットフォームを企業に提供するところに機会を見出したと付け加えた。
Dell氏は「われわれはハイブリッドクラウドに大きな可能性を見出している」と述べ、プライベートクラウドのハードウェア内に実装される「コンバージドインフラ関連ソフトウェア」によって、「パブリッククラウドの多くのメリットがオンプレミスのデータセンターにもたらされつつある」とし、「VMwareはこういった流れのなかで良い位置につけている」と付け加えた。
期待に届かない投資効果
EMCの買収により、Dellは未知の領域に踏み込むことになる。Dellは利幅の小さいサーバを販売してきている一方、EMCは利幅の大きなストレージ製品を、可用性やパフォーマンス、サポートの確実性を求める企業に提供することに特化している。
とは言うものの、合併後の企業はDellとEMCが直面していたそれぞれの壁をどのように乗り越えようとしているのかという疑問がある。EMCは、主力の企業向けストレージ製品群で期待通りの販売実績を残せておらず、同社の「EMC Atmos」やPivotalによるクラウド分野での市場拡大の試みも、アナリストらが期待する250億ドルという売上高の達成に向けた原動力として十分ではない。