インドネシア市場をねらえ

インドネシアのECと市場--ニーズにテクノロジを組み合わせる - (page 4)

高澤まなか(アクセンチュア)

2015-11-15 07:00

 一方であまりにこのサービスがうまくいっているために、GO-JEKのドライバーが顧客を迎えにいくのをGO-JEK以外のオジェックが阻止するというような事件が発生している。

 所得の増加とテクノロジの発展によって、インドネシアの顧客も積極的にECを利用する土壌がそろいつつある。現時点のEC事業では、まだBtoC事業は立ち上がり段階で、Consuming Classの中では上位クラスであるAfflentやUpperMassの消費者の利用に限定されている。

 しかし、GO-JEKのように価格・安全性が見合えば、中間層であるCommon mass/Massセグメントの消費者もスマートフォンを使ってサービスを利用するのだ。

 インドネシアのインフラ整備状況は十分とはいえない。しかし、バイクタクシーの組織化によって、不十分なインフラ状況を補うことができる。

 EC事業者が、GO-JEKのような車では実現不可能な短時間での宅配やショッピングサービス(コンビニやスーパーで指定した商品を買って届けてくれる)までカバーする輸送パートナーと組めば、道路・鉄道の整備を待たずとも商品のスピーディな配送を実現できる。

まとめ

 この連載では、インドネシアの消費者の特徴を取り上げ、消費者のニーズを満たすための現地企業の取り組みについて、具体的な事例を交えながら紹介してきた。

 インドネシアをはじめとする新興国では、若年層が人口の多くを占め消費意欲も旺盛でマーケットが高い成長性を持つという魅力がある。一方、宗教や人種、都市と地方における富の格差や趣向の違いといった背景から消費者がモザイク化しているという特徴に加えて、未整備なインフラによる不十分な物流システムや商習慣の違いといった壁がある。

 しかしながら、成長する新興国市場は短期間で大きく変化する可能性があり、現地のニーズにテクノロジを組み合わせて変化の波にうまく乗ることで成功する企業も少なくない。

 そんななか、日本企業も早くからインドネシアに進出しているが、独自の技術を持ち、かつ、海外でビジネスをする上で重要となる営業チャネルを手にしている企業――中長期的な視点を以て自社で築くか、または優れた現地のパートナーと連携する企業が結果的に成功している。

 パートナーと組むことで、パートナーのチャネルや人材を活用できるし、現地でのさまざまなビジネス取引を円滑に進められ、早期に成功が期待できるといった利点はある。その一方、自社側で相手が簡単に模倣しにくい独自の提供価値をもっていなければ、中長期的によい関係を築いていくことは困難であり、一部の日本企業もその点で苦戦している。

 伸び盛りの新興市場へ進出することで、変化する経営環境に適応し大きく成功するチャンスもあるが、一方で冷静に、自社の提供するサービスの価値と、自社で獲得できる市場の大きさを見極めたシナリオを作り、実行していくことが重要だ。

高澤まなか アクセンチュア株式会社 戦略コンサルティング本部 シニア・マネジャー
小売り・消費財業界を中心に、新規事業戦略、マーケティング戦略立案及び実行支援等のコンサルティングプロジェクトに従事。現在は、ジャカルタを拠点に、インドネシアを中心としたASEANに進出する企業の支援を行っている。

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