外部の専門家のための明解なデータ標準を作る
一部の先進的な企業は、すでにオープンデータに向けた取り組みを進めている。Financial Timesの最高製品・情報責任者であるChristina Scott氏によれば、メディア組織はすでにビジネス全体を通じて、データアナリストを活用し、情報から得られた知見を活用する試みを進めている。
同氏のチームはデータを公開し、組織内のすべての部門が、日常的な仕事を行うために必要な情報を得られるようにした。Scott氏によれば、このアプローチはオープンデータ戦略として捉えるべきものだが、その範囲は従来の企業ファイアウォール内の安全な領域内にとどめられている。この戦略は現在は社内向けだが、将来に向けて、組織外の人材を活用する方法も模索されている。
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「当社では、組織の外にもデータを公開できないかということも検討し始めている。当社が持つデータには多くの価値や知見が含まれており、これには作成したメタデータも含まれる。したがって、この情報をいかによりオープンな形で利用できるかを考えるのは素晴らしいことだ」(Scott氏)
Financial Timesの事業の一部には、業界向けの雑誌も含まれている。Scott氏は、データを公開することで、さまざまな部門のB2B顧客にも新たな知見を提供できる可能性があると述べている。実際、同社はすでに小規模な試みを始めている。
「われわれはハッカソンを開催し、APIを公開して参加者が新たなアイデアを思いつくチャンスを作った。しかし、オープンデータに関するこれまでの取り組みが、できることをすべてやった結果だとは思わない。そしてわたしは、これがほかの先進的な組織が向かっている方向だと考えている。先進的な組織は、その組織の中だけですべてのイノベーションが起こることはないと認識している」とScott氏は言う。
同氏は、技術的なレベルでは、すでに多くのデータが公開できるようになっていると話す。しかし、そこには意志が必要であり、ビジネス上の利害関係者や組織外のデータの専門家を納得させるためには、ガバナンスやセキュリティの問題に適切に対応する必要がある。
「データを理解しやすい形にする必要がある。組織内で、使われている分類を理解している者が日常的にデータを扱うことと、初めて見る人がデータを扱うことには違いがある。準備作業には、組織外の利用者に向けて、データの標準と説明を明確にすることも含まれている」(Scott氏)
信じて賭ける準備を
Working LinksのCIOであるOmid Shiraji氏も、よりオープンな社会を指向する一般的な動きが起きていると考えているIT専門家だ。明確に定義された企業のファイアウォールの中だけで仕事ができると思っている経営者は、夢の国に住んでいるようなものだ、と同氏は主張する。さらに、そういった経営者は大きな利点を逃すことになるという。
「所有するデータをさまざまな開発者に見せることができれば、イノベーションの恩恵を得ることができる。社内では扱えない分野に取り組んでいる外部の専門家にデータを提示できれば、大きな恩恵を受けることができるはずだ」とShiraji氏は述べている。
多くのITリーダーは、組織外の専門家にデータを開示したいと思っている、と同氏は言う。同氏はデータを公開することを検討しているCIOに対して、小規模な開発会社に社内のデータサイロを詳細に調べてもらい、どのような関係が存在し、どのような利点が生まれるかを検討してみることを勧めている。
Shiraji氏はこれまでに経験してきた仕事を振り返り、生活を豊かにするデータの使い方を見つけることに関しては、積極的に外部の支援を受けてきたと話す。しかし、CIOは規則や規制によって制約を受ける場合がある。
「この種の試みには、多くの障害が伴う場合がある。しかしわたしは、そこから得られる潜在的なメリットは、リスクよりもはるかに大きいと考えてきた。組織がデータを公開することで、利用できる新たな市場やチャネルを作り出すことができると決断するためには、信じて賭ける必要がある」(Shiraji氏)
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。