造船大手ジャパン マリンユナイテッドの横浜事業所では、設計部門が3D-CAD業務で利用する仮想デスクトップ環境を構築し、11月から稼働を開始した。
GPU仮想化技術によって、3D-CADを稼働できる高い描画力とコスト効率を両立し、技術者たちのワークスタイル変革を実現した。構築を手掛けたネットワンシステムズが発表した。

概要図(ネットワン提供)
ジャパン マリンユナイテッドは、日本の造船業界をリードしてきたユニバーサル造船とアイ・エイチ・アイ マリンユナイテッドの2社が統合して2013年に誕生した企業商船事業、艦船事業、海洋・エンジニアリング事業、ライフサイクル事業の4事業を軸として、船舶・艦艇・海洋浮体構造物などの設計、製造、販売などを展開している。
これまでワークステーションを利用して、船舶・艦艇・海洋浮体構造物などの3D-CAD設計業務を進めていたが、「端末がある場所でしか業務が進められない」「端末上に大容量データがあり他拠点と共有しづらい」「端末の運用負荷が高い」などの課題があることから、端末に依存しない画面転送型シンクライアントの採用を検討していた。
しかし、2010年に検討したブレードPC方式では、描画力を高めるためにサーバに搭載するGPUの数が多くなることからコストが高くなり、その後検討した仮想デスクトップでも、2013年当時はGPUを1つの仮想デスクトップが占有する技術しかなかったために集約率が低く、コスト面で見合わなかったことから実現していなかった。
こうした課題を解決するため、今回ネットワンシステムズが提案した仮想デスクトップ環境は、「FlexPod」とGPU仮想化技術を組み合わせた基盤。FlexPodは、ネットワンシステムズが豊富な導入実績とノウハウを持つVMware/Cisco/NetAppの製品を組み合わせた事前検証済みの仮想デスクトップパッケージで、レスポンスタイムを高めつつ、コストも最適化する設計・構成を実現している。
さらに、NVIDIAの最新のGPU仮想化技術を活用することで、各仮想デスクトップに対してGPUリソースを仮想分散して提供可能になり、集約率を向上することでコストを削減。また運用面でも、アプリケーションの追加やソフトウェアアップデートなどがマスターイメージの修正のみで済むことで、運用負荷軽減に寄与する。
専用の検証環境を設けてジャパン マリンユナイテッドと共同でパフォーマンスを検証することで、仮想GPUリソースの配分を含む仮想デスクトップ基盤全体での適切な設計を実現し、実際の3D-CAD業務への適合度合いを高めた環境を実現した。
従来のワークステーション端末から今回の仮想デスクトップへ移行したことにより実現したワークスタイル変革の内容は以下の通り。
- 従来、業務ピーク時に約10人の他拠点技術者が約6カ月間も長期出張支援していたが、他拠点でも業務可能になることで出張費・宿泊費を大幅に削減し、ワークライフバランスも向上
- バス移動が必要な広い敷地で、端末設置棟への移動をゼロにして、時間効率を大幅に向上
- 大容量の設計データを端末ではなくサーバ側に置くことで、他拠点とのデータ共有を迅速化
- 災害や誤操作、端末故障などによるデータ消失リスクを低減
- 端末のソフトウェアバージョンアップやリプレースなどの運用負荷を削減
ジャパン マリンユナイテッド 横浜事業所 艦船技術部 管理グループ システムチームの澤野光海氏は、以下のようにコメントしている。
「仮想デスクトップ上での3D-CAD業務を実現できれば、ワークスタイルが改善されてコストも削減できることが見えており、導入したいと考えていた。ネットワンシステムズと試行錯誤しながらパフォーマンスとコストバランスを検証した結果、仮想GPUを用いることで期待した基盤が実現できた」