データセンター事業者のIDCフロンティアは11月10日、パブリッククラウドサービス「IDCFクラウド」の提供地域を拡大し、これまでの東日本リージョン(福島県白河市)に加え、新たに西日本リージョン(北九州市)でも提供を開始した。西日本リージョンの特徴は、全ユーザーに安定したストレージ性能を供給するためにストレージをすべてオールフラッシュ構成としたこと。メニュー構成と料金は東日本地域と西日本地域で共通。
新たに提供を始めた西日本リージョンの特徴は、メニュー構成はそのままに、オールフラッシュ構成としたことでストレージ性能を高めたこと。リソース共有型のメニューの場合、東日本リージョンはストレージとしてハードディスクとフラッシュのハイブリッドストレージを階層型で利用しているが、西日本リージョンではオールフラッシュ構成のストレージ「EMC XtremIO」を採用した。
同社実施のべンチマーク試験によれば、東日本リージョンと比べてI/O性能が2~40倍に向上した(図1)。具体的には、4Kバイトのランダムリードの場合、データドライブのI/O性能は毎秒2万6193件から毎秒5万22件へと約2倍に向上。起動ドライブのI/O性能は、毎秒2000件から毎秒8万723件へと約40倍に向上した。データベースサーバのトランザクション性能試験(tpcc-mysql)では、毎分5593件から毎分2万1062件へと約3.77倍に向上した。
図1:オールフラッシュ構成の西日本リージョンのI/O性能は、ハイブリッド構成の東日本リージョンと比べて2~40倍に向上した
オールフラッシュストレージの採用でストレージI/O性能を要求するサーバの費用を削減できるようになった(図2)。例えば、ハードウェア専有型でPCI Express接続型フラッシュストレージ「Fusion-io ioMemory PX Series」を内蔵する高額メニュー「HighIO 5XL128」(40コア、メモリ128Gバイト、税別で月額17万9000円)と同等のI/O性能を、ハードウェア専有タイプではないメニュー「HighCPU 2XL32」(16コア、メモリ32Gバイト、税別で月額7万3500円)で実現できるようになった。
図2:オールフラッシュ構成でサーバ専有型の高額メニューと同等のストレージI/O性能を安価に実現できるようになった
複数のオールフラッシュストレージを比較検討し、結果としてXtremIOを選んだ。選択のポイントは、インライン重複排除とリアルタイム圧縮(書き込みデータ量の削減によるキャッシュの効率利用)、コントローラのソフトウェア(仮想マシンの複製速度)、スケールアウト型で拡張できることなど。
IDCフロンティア 技術開発本部 UX開発部 サービスデベロップメントグループリーダー 梶本聡氏
IDCフロンティア 取締役 技術開発本部担当役員 西牧哲也氏
ハイブリッド構成ではなくオールフラッシュ構成のストレージを選んだ理由を、技術開発本部UX開発部サービスデベロップメントグループでグループリーダーを務める梶本聡氏は「パブリッククラウドで階層型ストレージを使うと、ユーザーの知らないところでデータがハードディスクに移ってしまう」と説明する。
クラウド事業者から見れば階層型ストレージは効率がよいが、ユーザー側で階層をコントロールできないことが課題となっていた。こうした理由でハードディスクを排除した。
「IaaSは安定市場だが、すでに淘汰が始まっている。勝ち残るためには、サービス提供の継続性(可用性のSLA)、スケールメリット(規模の経済)の追及、ユーザーインターフェースの使いやすさの3つが重要」と説明するのは、取締役で技術開発本部担当役員の西牧哲也氏。IDCFクラウドは、これらの条件を満たしているという。
クラウドサービスの提供基盤となるデータセンターの規模は大きい。北九州市の場合、ラック600本規模のデータセンターが5棟建っており、増やす計画が立っている。福島県白河市の場合、ラック600本規模のデータセンターが2棟あり、これ以外に新しいデータセンターを建築中。東西2拠点で、現在でも60万台規模のサーバを預かることができる。
「国内ナンバーワンのクラウドサービス事業者になる。ナンバーワンの定義はないが、誰から見てもIDCFクラウドが『国内でナンバーワンだよね』と思ってもらえるようになりたい。2015年度中に1万アカウント、2020年より前に10万アカウントを獲得したい」(西牧氏)