米VMwareの最高経営責任者(CEO)を務めるPat Gelsinger氏が、11月10日と11日に都内で開催しているイベント「vForum 2015 Tokyo」のために来日した。VMwareの親会社であるEMCがDellに買収されることになり、上場を含めてVMwareの独立性を維持するとされているが、それでもVMwareの今後の経営方針には注目が集まっている。
Dellによる親会社EMC買収を話すVMwareのPat Gelsinger CEO
VMwareの今後について、Gelsinger氏は、かつてHewlett-Packard(HP)、現在はHewlett-Packard Enterprise(HPE)のCEOであるMeg Whitman氏とのやり取りがあったことや、Michael Dell氏と対話したことなどエピソードも交えて説明する。
「Dellに買収された後も何も変わりません」
親会社EMCがDellに買収されるとの知らせが入った際、Gelsinger氏はWhitman氏に電話してこう話したという。VMwareとHPは仮想化の黎明期から緊密な協業を続けており、相互に重要なパートナー関係にある。
Whitman氏は、DellによるEMC買収について、Dellが500億ドルという巨額の負債を負うことが競争上の足かせになるだろうという内容のメールを社内に送った。これについてGelsinger氏は「VMwareを批判したというよりは、(PCを中心に)長年のライバル関係にあるHPとDellという文脈において、ライバルの戦略が優れたものではないとWhitman氏がHP社員に訴求したもの」と説明した。
その後、Dellの創設者で会長兼CEOのMichael Dell氏から連絡が入り、同じように「VMwareのビジネスは今後も変わらないと伝えられた」(Gelsinger氏)という。
ただし、670億ドル、日本円で8兆円規模に上るIT業界において歴代でも最大級のM&Aとなる今回。「当然さまざまな意見があるものの、概ね中立か、(DellにとってVMwareを持つことの利点が大きいという意味で)好意的な反応が多い」とGelsinger氏は話す。
日本企業に安定性を訴求
それでも、VMwareの今後に懸念を持つ日本企業もいると考えており、「それを払拭することも今回のvForumのポイント」としている。
11月9日には、NTTコミュニケーションズとコンテナ技術のクラウド基盤の領域で協業すると発表。
11月10日には、富士通とクラウド分野でグローバル規模の協業を拡大すると発表した。富士通のデジタルビジネス基盤の中核となるIaaS/PaaS「K5」とVMwareのデスクトップ仮想化ソフトウェア群「Horizon」をベースにした仮想デスクトップサービス「v-DaaS」を世界展開するため、販売マーケティング活動のプロジェクトチームを発足させることで合意したとアナウンスしている。
日本法人の代表取締役会長を務める三木泰雄氏
日本法人の代表取締役会長を務める三木泰雄氏は「EMC傘下の10年間も、VMwareは独立性を保ってきた。Dellによる買収でも同様になるのではないか、と日本企業が感じている印象がある」と話す。
全体としてGelsinger氏は、買収後もVMwareが現在とあまり変わらないという見通しを強調。「VMwareが持つキャッシュをDellに引き渡すということもなく、今後も株主に還元していく。場合によってはM&Aをする可能性もあり、研究開発にもかなり資金を投じていく」と話した。
その研究開発の内容について、ソフトウェア定義データセンターやハイブリッドクラウド、モビリティなどを挙げながら、最も強調したのは、急成長中のネットワーク仮想化製品「NSX」だ。
「2015年のNSXは、2005年に爆発的な普及を開始した(ハイパーバイザ)ESXに相当するほど大きく拡大している」(Gelsinger氏)
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このほか、EMCとVMwareが10月20日に発表した、クラウドサービス事業を展開する新会社設立についても触れた。EMCとVMware、そしてEMCが最近買収したVirtustreamの3つの部門を統合して設立する新企業は、パブリッククラウドサービス「VMware vCloud Air」をはじめ、「VCE Cloud Managed Services」、VirtustreamのIaaS、EMCの「Storage Managed Services」と「Object Storage Services」などを提供することになっている。