PCメーカーとしてスタートした米Dellは2013年、非公開企業という道を選んだ。当時、創業者兼CEOのMichael Dell氏は、Dellが目指すエンタープライズソリューションベンダーへの拡大にあたって長期的視野に基づき戦略を進めていくため、と繰り返し強調した。
そして2年後の今年、Dellはストレージ大手のEMCを670億ドルで買収する計画を発表、大きな賭けに出る。Dellが10月、本拠地テキサス州オースティンで開催した自社イベント「Dell World 2015」で、エンタープライズとソフトウェアの両事業部のトップに聞いた話をEMC買収、クラウドを中心にまとめたい。
Dell エンタープライズ事業部プレジデントのMarius Haas氏
話を聞いたのはエンタープライズ事業部プレジデントのMarius Haas氏、ソフトウェア事業部プレジデントのJohn Swainson氏、ともに2012年にDellに入社、Dell氏の重要な右腕だ。
Haas氏は、EMCの買収を「非公開化に続く次のフェーズ」と位置付ける。「Dellが中核とするビジネスにモメンタムがあり、とても良い感触を得ている。顧客の反応はポジティブで、Dellが顧客の問題を解決するだけでなく、さらによい提案ができると期待をもらっている」と述べた。
金額が示す通り大型の買収となり、取引の締結から完了まで時間がかかるが、統合のプランニングについて作業を開始しているとのこと。すでに2社はそれぞれ統合担当を任命しており、発表から1週間後に開催されたDell Worldではどのように組織化していくのか、組織レベルでの初回のミーティングが開かれたという。
EMCはストレージベンダーとしてスタートしたが、仮想化、セキュリティ、ドキュメント管理と膨大な製品ポートフォリオを抱える。DellはPCやワークステーションを含むクライアントソリューションズ、サーバーやストレージなどのエンタープライズソリューションズ、ソフトウェア、サービスの4つの大きな事業の柱を持つが、EMCはクライアントソリューションズを除く事業が影響することになりそうだ。
EMCの主力であるストレージなどハードウェアについては、Haas氏のエンタープライズソリューションズ事業部に入る。ここではトレンドのコンバージドインフラでの効果を期待しているようだ。「コンピューティング、ストレージなどを1つの組織にし、中核のインフラレイヤーのハイパーコンバージェンスを加速することにフォーカスする」とHaas氏。
EMCのストレージラインは継続し、DellのPowerVault、EqualLogicの両ラインも残る。「やや重複があるが、Dellはローエンドから入りハイエンドにというアプローチであるのに対し、EMCはハイエンドの高価格帯に強い。補完し合うことができる」との見通しを示した。
なお、DellとEMCは2003年にストレージ再販で提携、2011年までEMCのミッドレンジストレージ製品を取り扱っていた。お互いを知った仲であり、買収の成功を左右するカルチャー面での懸念は抱いていないようだ。