ワークスタイル変革がもたらす可能性を模索せよ--サイボウズ青野氏 - (page 3)

阿久津良和

2015-11-14 08:15

地方創生は地域全体で”危機意識”を共有することから

 次のトークセッションは、徳島県 特定非営利活動法人グリーンバレー理事長の大南信也氏と島根県 隠岐國学習センター センター長の豊田庄吾氏を招いて「地方創生」に成功した理由を青野氏が尋ねた。

 大南氏は「1970年代にシリコンバレーで生活した経験を活かし、神山町のような何もない場所でもクリエイティブな人材が集まれば、何か起こるだろうと漠然とした確認を持っていた。当初は皆が楽しめる町作りとしてイベントを起こしてアーティストを呼び込むと、若者や起業者の移住が始まった」と成功に至る契機を説明。その結果「ITベンチャー企業のオフィス誘致を行うとサービス産業のニーズも生まれ、町としての成長に至った」という。言葉にすると簡単だが、ここに至るまでは25年間という月日が流れている。

 豊田氏は「島の高校が統廃合し、島全体のコミュニティがつぶれるため、高校を元気にするプロジェクトに参加したのが切っ掛け。当時は東京で仕事をしていたが紆余曲折の末に高校連携型公立塾の運営に参加した。島全体で危機感を共有し、皆が当事者意識を持つのが重要だ。このままいくと財政破綻するという情報を“見える化”し、首長や上層部が給料カットを実施して、全体に危機意識を広げていった」という。すると「島の住民も自らバス代の補助金カットを自ら提案するようになり、住民同士のコミュニケーションも膨らんでいった」そうだ。


徳島県 特定非営利活動法人グリーンバレー理事長の大南信也氏(左)と、島根県 隠岐國学習センター センター長の豊田庄吾氏(右)

 ”変化に対する覚悟”という問いに対して大南氏は、「町として成長するということは、少しずつ変化していることと同じ。地に足の着いた状態で一歩ずつ変化を認識し、その場に参加する人々がさらに変化を生み出す」からこそ、躊躇すべきではないという。

 大南氏の長年にわたる地方創生の取り組みを支えてきたのは、過去の国際交流事業(米国から母校に贈られてきた人形を米国へ里帰りさせるプロジェクトに取り組みを成功させたことを機縁に始まった)の成功体験だ。「1つのアクションで変化が生じるからこそ、無駄と考えずに良きことは続けるべきだ」と大南氏。

 また豊田氏は「(高校連携型公立塾に)他の市町村から参加する学生も少なくないが、元からの住民も相手をリスペクトし、島に渡った学生たちも島のルールや文化をリスペクトできたのが大きな理由。互いを尊重した関係性があったからこそ成果につながっている」と語った。

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