何十年もの取り組みを経て、とうとう新たな形の(シンプルではあるが)本物のソフトウェア開発を、技術的なノウハウをほとんど持たない人々によって行える時代が到来した。これにより、新世代のビジネス開発者が生まれるとともに、これまで長い間企業で放置されてきた問題を解決する、草の根アプリケーションの波が押し寄せるだろう。
事実上、これまでのITの歴史では、新たなソフトウェアを手に入れるための選択肢は、自分で作るか、購入するかの2つしかなかった。端的に言えば、アプリケーションのビジネスユーザーのほとんどは、ソリューションを自ら開発するのに必要な技術的能力を持っていなかった。
これまで事業部門は、必要なスキルを持ってはいるが、ビジネスそのものについての直接的な知識についてはあまり関心を持たない人間に、自分たちの命運を委ねざるを得なかった。あるいは、必要なものに一番近い既存のソフトウェアを購入して、ニーズに合わせて調整するしかなかった。どちらの方法も、ビジネス上のニーズに十分に合致した技術的ソリューションを生み出すことはできず、「使える」ものを使わざるを得なかった。
同時に、現代のビジネスアプリケーションに求められる機能セットと複雑さは増大し、実際にその厳しい要件と高い期待に応えられる自前のアプリケーションを構築するだけのリソースや時間を持っているIT部門の数は少なくなっている。これによってほとんどの組織では、必要だが存在しないアプリケーションが増えており、IT部門と事業部門の両方が、その穴を既存のクラウドアプリやモバイルアプリで埋めようとしてきた。その多くは、オンプレミスのIT資産に対する投資やアクセス、コントロールを必要としないSaaSソリューションだ。それにも関わらず、ソリューションと実際のビジネス上のニーズとの間には、大きなギャップがあることが多い。
これまで、この問題を解決しようとして、多くの試みがなされてきた。普通のビジネスユーザーが、ソフトウェアを使ってそのときに抱えているニーズを満たすソリューションを生み出せるようにすることは、この問題に取り組んできた企業にとって、長年の間究極の目標だった。20年前ほどには高速アプリケーション開発(RAD)がこれを目指し、10年前はモデル駆動開発やエンタープライズマッシュアップだった。
ユーザーが自分のニーズを満たすアプリケーションを直接生み出す能力を持たないことは、テクノロジの活用を阻害する上で、長年の間、致命的とも言える問題だった。このことは、デジタル化によって変革を進める企業規模の戦略的な取り組みを阻害しているとも言えるかもしれない。IDCは、2016年にはこの変革が大半の組織にとって重要な課題になるとしている。これは既存のIT部門が、今日の組織を完全にデジタル化するための規模も資源も持っていないためだ。