セールスフォースのパートナーエコシステムという観点でみれば、これまでは業種別アプリケーションの品ぞろえによる「水平拡大」が中心だったが、新プログラムでは特にエンタープライズクラスの企業を対象に「垂直深耕」も積極的に進めていこうという思惑があるのは間違いない。
こうした取り組みを、セールスフォースの競合状況と照らし合わせてみると興味深い。同社にとって業種別ソリューション分野で競合相手となるのは、オンプレミス環境ですでに巨大な顧客ベースを持つSAPとOracleだ。しかも両社ともエンタープライズクラスの企業から確固たる支持を得ている。
この両社が今最も力を入れているのが、オンプレミス環境での巨大な顧客ベースをそれぞれ自社のクラウド環境へ移行させることだ。ここしばらくは両社ともその「大移行期」が続く。システム更新時期を迎えた顧客を他社に奪われることなく、自社のクラウドやハイブリッド環境へ導くかが課題となっている。
セールスフォースにとっては、この大移行期こそ、リプレースのビッグチャンスといえる。しかも、もともとCRMをベースとしてきた同社にとっては、顧客との接点を強化したITプラットフォームが求められている状況はまさしく“追い風”となる。
そう考えると、セールスフォースの新プログラムはSAPとOracleのエンタープライズ向け業種別ソリューションの“牙城”を切り崩すための施策とも見て取れる。
果たしてSalesforce Fullforceの取り組みがどこまで広がるか。その状況次第で、セールスフォース、SAP、Oracleの三つ巴の戦いによるエンタープライズ市場の勢力図が塗り変わる可能性もありそうだ。