オーストラリアのニューサウスウェールズ大学(UNSW)のエンジニアチームは、シリコンマイクロチップで量子コンピュータのコードを作成できることを証明した。
同大学によれば、この量子版のコンピュータコードの記述や操作には、シリコンマイクロチップに組み込まれた2つの量子ビットを使う。今回の成果により、「強力な量子コンピュータを実際に作れるだけの、信頼性のある操作は可能か」という長年の疑問が払拭されたという。
量子コードには、量子もつれと呼ばれる現象が利用される。量子もつれとは、ある粒子の計測結果が、離れた場所にある別の粒子に影響を与えるという、直感に反した現象のことだ。
「この現象は、Albert Einstein氏を含め、この分野の高名な科学者たちを悩ませてきた」と、同大学電子工学・通信研究科のAndrea Morello教授は言う。「Einstein氏は量子もつれについて懐疑的だった。これはこの現象が、離れた場所からただちに物体に影響を与えることはできないという、『局所性』の原理に反しているように見えるためだ」
この研究を主導したMorello氏は、UNSWの量子計算・通信技術センターのプログラムマネージャーでもある。
この実験で使用された2つの量子粒子は、シリコンマイクロチップ内に組み込まれた1つのリン原子の電子と原子核だという。
長年の間、北アイルランドの物理学者John Bell氏が提唱した理論であるベルの不等式が、古典力学的な世界と量子論的な世界を区別する方法として使われてきた。この理論は、「世界の局所的記述は、量子論的メカニズムのすべての予想を再現することはできない」というものだ。
同大学によれば、「ベル不等式のテスト」は極めて厳しいものであり、どんな小さな破綻があっても合格することはできないが、同チームは研究の過程で、このテストで過去最高のスコアを獲得した。
「ベルの不等式テストにこれだけ高いスコアで合格したことは、量子コンピュータの操作を完全に制御下に置いたことをはっきりと証明している」とMorello氏は述べている。
今回の発表の1カ月前には、同大学のAndrew Dzurak教授が率いるチームが、2量子ビットの情報の間で計算を行うことを可能にする、量子論理ゲートをシリコン内に作ることに成功している。
Dzurak氏は、それまでシリコンを使って2つの量子ビットを相互作用させ、論理ゲートを作ることはできなかったとして、これはオーストラリアだけでなく世界にとって重要な成果だと述べている。
Dzurak氏は当時、「量子コンピュータを実現するためには、1量子ビットおよび2量子ビットの計算を行う能力は必要不可欠だ。5年以内に作る予定のプロトタイプチップは、大幅に縮小可能な製造プロセスを用いるもので、さまざまな計算を行えるものになる。これによって、既存のコンピュータでは解くことのできない問題を解けるようになることを期待している」と述べている。
「スーパーコンピュータの性能を上回る量子コンピュータを作れれば、暗号を破ることができる世界に踏み込むことになる」(Dzurak氏)
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。