アクセンチュアは10月27日、調査レポート「Digital Transformation in the Age of the Customer(顧客中心主義のデジタル変革)」を発表した。このリポートは、世界各国における企業の意思決定者約400人に対する調査を基にしている。
調査期間は、2015年 5~6月の間。調査対象は、米国、カナダ、英国、ドイツ、フランス、中国、インド、日本、ブラジル、メキシコのBtoC、BtoB企業で、業種は、自動車、消費財、テクノロジ/電機、製造・素材、小売、メディア・エンターテイメント、旅行/観光、エネルギー/公益事業、通信、銀行、ライフサイエンス、保険、キャピタルマーケットの分野が含まれる。
同レポートでは、今後12カ月のビジネスの最優先事項について聞いている。結果は、「顧客体験価値の向上」だと答えた企業が最も多く(21%)、「収益向上」(17%)や「差別化要因の向上」(16%)を上回った。また、デジタル変革を推進する目的としては、「顧客満足度の向上」、「利益率の向上」、「商品の市場投入スピードの加速化」という回答が上位3つに上った。
さらに、回答者の63%が「オンラインにおける体験価値向上を計画中」であり、46%が「モバイルを活用したサービスを新規導入または改善していくことを検討中」と答えている。一方で、「実店舗での購買体験価値を向上させたい」と答えた回答者は39%にとどまった。この結果から企業はデジタルチャネルを通じた顧客接点の強化に注力していると、アクセンチュアは指摘した。
同リポートでアクセンチュアは、顧客中心主義のデジタル企業になるための3つの課題として、「デジタル変革のビジョンと戦略の策定」「組織としての対応準備」「デジタル化の効果測定」を挙げる。
「デジタル変革のビジョンと戦略の策定」では、デジタル変革のビジョンと戦略を策定する責任者があいまいであることが、デジタル変革を妨げる要因の1つであるとし、「誰が組織におけるデジタル変革のビジョンと戦略を策定すべきか」と尋ねている。結果は、「CIO」(30%)という回答が最多で、続いて「CEO」(27%)、「CDO」や「CMO」と答えた回答者はそれぞれ17%と8%となった。
また、「組織としての対応準備」では、「自社においてデジタル変革の対応準備ができているのはどこか」という質問に対する回答を挙げ、「テクノロジ」(75%)と「運用プロセス」(75%)といった回答に比べて、「組織」(64%)という回答が最も少ない結果となったという。
さらに「デジタル化の効果測定」では、企業は効果測定に必要なアナリティクスや新たな指標を導入する前に、プロセスやテクノロジの導入に不安を持つ傾向があることが判明したと指摘。「デジタルビジネスの実現に不可欠なこと」について、57%の回答者が「デジタル技術の導入」と回答した一方、「デジタル変革の指標と測定方法の確立」と答えた回答者は29%にとどまったという結果を挙げている。
こうした結果を受けて、アクセンチュアでは、デジタルを活用した顧客体験の差別化は、特定の組織・部門だけで実現できるものでなく、組織・部門横断で組織リーダーたちが連携を強化していく必要があること、また、デジタル変革のビジョンを実現するためには、個別最適ではなく、企業文化やプロセス、テクノロジといった全社的な変革が必要だと提言している。
さらにデジタル変革を実現するための新たな組織機能を追加する場合の留意点、社外パートナーの協力を得ることの重要性などを同レポート内で指摘している。