Hewlett Packard Enterprise(HPE)の最高経営責任者(CEO)Meg Whitman氏によれば、旧Hewlett-Packard(HP)の分割にあたって、通常なら数年かかるはずのITインフラ構築を6週間で行う必要があったという。
旧HPは、主にPCとプリンタを扱うHP Incと、ビジネス指向のHPEに分割されたが、同社はその準備段階で4000台のサーバを構築し、40万件の電子メールボックスを生成し、170カ国にまたがる進行中の500件のプロジェクトを整理した。
※クリックすると拡大画像が見られます
Whitman氏は、ロンドンで開催されたカンファレンスHPE Discoverで「われわれはHP分割の複雑なプロセスを非常に上手にこなした。その規模は、ほとんどの企業であれば試してみようともしないものだった」と述べた。
同氏は「この分野で成功できるのは、瞬時に発明と再発明ができる企業だ」と話し、HPEが分割された際の経験を踏まえて、同社は「企業を『新たなビジネスのスタイル』と呼ばれるものに導くことができる、数少ない会社の1つだ」と述べた。
「HPEは顧客のIT環境をより効果的で、生産的で、安全なものにしつつ、古いものと新しいものの橋渡しをすることができる」(Whitman氏)
迅速にIT環境を変革しながら、AmazonやGoogle、Microsoftなどの巨大データセンター運用会社が採用しているような自動化のアプローチに追いつくため、HPEは「HPE Synergy」プラットフォームを発表した。このサービスは2016年の後半にリリースされる予定だ。
HPE Synergyプラットフォームは、多くのアプリケーションの基盤となる、サーバやストレージ、スイッチなどのソフトウェア定義インフラの自動展開と監視を、プログラムによってセットアップするための「統合」APIを提供する。
HPE Synergyは、さまざまなサードパーティーの管理レイヤと連携させることで、データセンターでの仮想マシンやソフトウェアコンテナ、ベアメタルシステムの展開と監視をインテリジェントに実施することができる。またその過程で、「AWS EC2」のようなクラウドプラットフォームと同じくらい簡単でありながら、物理的ハードウェアの力をより引き出せるような、新たなアプリケーションのためのインフラを生み出そうとしている。
HPEは、それらの異なるタイプのインフラを管理するために、提供されている既存のツールを再発明するのではなく、既存のツールをプラグインできる単一のプラットフォームを提供する。HPEによれば、このプラットフォームは「Chef」、ベアメタル上で動作する「Ansible」、「Docker」のコンテナ、さらに「ESXi/vSphere」、Microsoft、Nvidia上で動作する「VMware」と連携させることができる。
HPEのコンバージドデータセンターインフラ事業担当ジェネラルマネージャーであるRic Lewis氏は、HPE Synergyプラットフォームはオンプレミスのシステムでクラウドプラットフォームの「スピードと敏捷性」を実現できるように設計されていると述べている。
しかしHPは、オンプレミスのソフトウェア定義インフラの分野で、Ciscoとそのコンポーザブルインフラの取り組み「UCS Mシリーズ」との競争に直面している。また、データセンターのリソースを1台のマシンのものであるかのようにプールするプラットフォームである「Mesosphere」とも競合している。