テクノロジで迫る沈没船の謎(2)--北極海に眠る19世紀の探検船 - (page 3)

Jo Best (Special to TechRepublic) 翻訳校正: 村上雅章 野崎裕子

2015-12-30 07:00

 ダイビング器材が到着して初めて、人間のダイバーが現場に潜水できるようになった。強風で水中の堆積物が巻き上げられていたが、Harris氏ともう1人のダイバーは幸運と適切な判断により、木材の残骸が横たわった海底に降り立てた。そして彼らは、この残骸を「手探りで」たどっていくことで沈没船本体のある場所に向かっていった。

 Harris氏は「海底の暗闇の中から沈没船が厳かに姿を現した。その船は傾くことなく海の底に鎮座していた。海の歴史に残る一大事件の象徴とも言える船を間近に見ていると思うと、何とも言えない気持ちがこみ上げてきた」と述べ、「気分は間違いなく高揚していた」と続けた。

 沈没船の残骸は損壊していたり、がれき化した状態で発見されるのが通常であるが、後にエレバス号であると確認されたこの船の大半は無傷だった。露天甲板、上甲板、後甲板も識別可能であり、上甲板は氷によって裂け目ができていたものの、その裂け目からパークス・カナダの2名のダイバーらは下の部屋をのぞくことができた。彼らは高級船員向けに用意された酒類を入れるガラス製の四角いボトルを発見した。また、下級船員の居住区と彼らが食事をしたと思われる食卓の周辺を調査した。

 最初の潜水では船の号鐘も見つかっていた。吊り具からは外れてしまっていたが損傷は見られず、1845年の刻印が入っていた。1845年は2隻の船が北極海に向けて航海に出た年だ。

 沈没現場が氷に閉ざされる季節を前にして調査はいったん終了したが、チームは冬場でも現場にアクセスするための新機材をそろえ、2012年4月にエレバス号の元に戻ることができた。

 カナダ軍の技術開発機関であるカナダ国防調査開発局(DRDC)は、熱湯のジェット水流で氷を切り出していく機材を貸与してくれた。沈没地点の海上は氷に閉ざされていたが、DRDCのこの「熱湯ナイフ」を使って2m四方の氷を切り出し、ダイバーらは氷の下にある現場に潜水していけるようになった。

 Harris氏は「こういった状況下での潜水は、氷のおかげで波が立たないという利点がある」と述べ、「その結果、細かい粒子状の物質はすべては海底に沈み、極めて良好な視界が得られる。これにより、さまざまな技術的アプローチを用い、はるかに良い状態で現場を記録できるようになるわけだ」と続けた。

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