アプリケーション性能管理(APM)ツールを展開するAppDynamicsは米国時間の11月30~12月4日に、米国のラスベガスでユーザーカンファレンス「AppDynamics APPSPHERE 2015」を開催している。2014年に引き続いて2回目の開催となる。
「Software is defining buisiness(ソフトウェアがビジネスを規定する)」というメッセージを打ち出したこのカンファレンスでは、2014年の倍となる1500人超が集まり、ユーザーのトレーニングイベントなどとともにAppDynamics戦略などを示した。
AppDynamicsは、9月29日に新たな最高経営責任者(CEO)としてDavid Wadhwani氏が就任した。Adobeで上級副社長・デジタルメディア本部長だったWadhwani氏は、35億ドル規模だったビジネスを、SaaSモデルによって80億ドルにまで成長、デジタル変革を成功に導いた人物。2008年創業のAppDynamicsの成長を任された。
さまざまなソフトウェアが絡み合うシステム環境を、鳥瞰図のイメージで一元的に管理する同社のソフトウェアには、性能監視はもちろん、情報漏えいなどのトラブルが発生した際に、状況を詳細に把握できるという意味で、コンプライアンス対策としての一面もある。
AppDynamics 最高経営責任者(CEO) David Wadhwani氏
「われわれにとって顧客の成功が全て。企業のデジタルビジネスへの変革を成功裏に導くことが使命」だとWadhwani氏は強調する。
Wadhwani氏は Adobeで従来のパッケージソフトウェアビジネスをSaaSモデルに変革することに取り組んできた。製品は競争力を持っていたものの、成熟市場の中で成長が鈍化、売り上げは横ばいに近い状態が続いており、ビジネスの構造を変える必要があったと説明する。顧客が1年半ごとに出荷される新版を必ず購入するわけではないことが背景にある。
「何を販売するのか、どのように商品を届けるのかに着目した。製品をサブスクリプションモデルにし、ネット販売を主力に据え、ソーシャルメディアをはじめとしたコミュニティづくりに取り組んだ」(Wadhwani氏)
結果として、顧客のフィードバックを開発と事業方針に反映しやすくなり、好循環を生み出すことに成功したという。さらに、パッケージソフトウェアでは得られなかった定期的な収益基盤が年間30億ドルに上るようになり、安定したストックビジネスとして計算できるようになったと話す。
自身のこうした経験から、Wadhwani氏は、デジタルビジネスへの変革が厳しい道のりであることを理解したという。IT部門とビジネス部門がアジャイルのイメージで協力し合う、Dev/Opsを継続的に実践することがポイントだ。ビジネス側の責任者が参画して、三者間での協調体制「Biz/Dev/Ops」を確立することに心血を注いだ。
Wadhwani氏はこれらの経験を生かし、来場者のビジネスに還元できるように、信頼されるパートナーになりたいとの意気込みを語った。
一方、デジタルビジネスへの変革とは、ITなどハイテク産業だけの話ではないとして、金融業と自動車業での例を挙げた。