アプリケーション性能管理(APM)ツールを展開するAppDynamicsが米国時間の11月30~12月4日に開催した、ユーザー向けのカンファレンス「AppDynamics APPSPHERE 2015」。この中でPresidentの役職にあるJoe Sexton氏がAPMツールのニーズがなぜ高まっているかを説明した。
「事前に効果の仮説をたて、それが実現可能かどうかを実際のトライアルを通じて立証するため費用回収の見込みがたてられ、投資対効果(ROI)が高い」――Sexton氏はビジネスの価値を提供できることがAppDynamisの強みと語る。
AppDynamics President Joe Sexton氏
Sexton氏はUBERなどを引き合いに出しながら、顧客体験を向上させるため、ソフトウェアの使い勝手やパフォーマンスなど品質向上することが企業の競争原理であり、変革が必要な理由と説明する。一方、価格競争では顧客を獲得できたとしても企業体力をむしばむことになるとし、地域を超えて顧客にリーチできるビジネスのデジタル化を推進するとともに、「常に最高の顧客体験」という価値を提供しロイヤリティを上げることが重要と説く。
AppDynamicsでは、顧客のウェブやモバイル端末から、アプリケーション、データベースに至るまで一連のトランザクションを可視化し、性能を監視、予兆を管理して障害を未然に防ぐことができると語る。
本番環境に導入しても、AppDynamics自身によるCPUオーバーヘッドは2%以下を維持しながらリアルタイムに全ユーザーの全トランザクションを可視化するため、顧客体験を向上させるのに有効とした。
また、複雑な設定なしで稼働を開始でき、自動的にアプリケーションの構成を検知し、関係するコンポーネントを認識、性能監視をする上で必要なしきい値も自動的に設定できるなど、導入の容易さを強調した。直観的なUIのダッシュボードにより、運用、開発担当者のみならず、ビジネス担当者でも理解できる共通言語にできるという。
その結果、ビジネス部門と開発、運用が一体となって開発を継続する「Biz/Dev/Ops」の協調が実現できるとしている。
「顧客から問い合わせを受けてから障害に気がつくのではなく、性能の変化を常にとらえて、事前に手を打つことができる。顧客満足度の向上や障害対応コストの削減、さらにはブランド価値の維持という金銭的価値を生む」(Sexton氏)
これまでの各コンポーネントを個別監視する手法では、アプリケーションの遅延によって顧客体験が下がっても、それがコードに起因するのか、インフラのリソースが原因か、データベースなのか、はたまた顧客側のウェブやモバイルが原因なのかは判然とせず、関係者が招集されてログを持ち寄り、原因箇所を特定するだけで数時間から1日がかりになることも珍しくなかった。
各コンポーネントを個別監視する場合、原因を特定している間にソーシャルメディアで悪評を流されてしまう可能性もある
一方、アプリの遅延といった顧客体験の低下などの情報はソーシャルメディアなどで拡散される可能性もあり、売り上げに直結するため早急な対策が求められる。「ある大手銀行は原因究明に9時間を要したことがあった。そこのCIOが当社に問い合わせをして実際にAppDynamicsを試した所、その原因箇所を特定するために要した時間はわずか40秒であった」
エンドユーザー体験の監視を起点にしてシステム全体の状況と、個別コンポーネントの詳細を確認することで、これらの課題は解決することができる。さらにランブック自動化(RBA)を導入することで、自動的な対処も実現できるようになるとしている。
さらに、AppDynamicsのエージェントが収集する性能情報とともに、トランザクションデータ自体を取得可能であり、トランザクションとパフォーマンスの相関などを知ることにも利用できるという。「例えば、システムの性能低下が3%程度の顧客で発生しているとしよう。全体から見ると少数の顧客かも知れないが、その3%の大多数がプレミア顧客であったらどうだろうか。将来に渡る売り上げを逃し、優良顧客をみすみすライバルに渡しかねない」
アプリケーション分析機能により、悪い体験をした優良顧客に、5分以内のお詫びや割引クーポンを送ることもでき、マーケティングツールとしても使える
リアルタイムの顧客データや性能データ、それらを合成したダッシュボードをプログラム開発なしで構成できるアプリケーション分析機能をなどをそなえるため、例えば悪い体験をした優良顧客に、5分以内にお詫びと次回の割引クーポンを送ることも容易であるとし、マーケティングツールとしての性能も示した。
「シスコは8万8000人のユーザーが利用しているウェブ会議システムをたった3人で運用している。何らかの問題が発生したユーザーを検知したら、顧客から指摘を受ける前に、能動的に不便をお詫びして問題が解消したことを連絡している。これが、顧客体験を確かなものにしている」
これまでは、このような機能を実現するために、複数のツールにより、画面操作を渡り歩き、最終的に人間が判断をしていたという。これを全て、一枚の画面からドリルダウンで操作ができるため高い費用対効果につながるとした。
Sexton氏は「年間サブスクリプションの更新率は98%超、18カ月以内に3倍以上のライセンス数を追加購入する顧客が多数いる」と説明。堅調である点をアピールしていた。