グーグルが競合になる可能性も--住設大手LIXILが“IoTハウス”に取り組む理由

三浦優子 2015年12月04日 12時59分

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 住宅設備大手のLIXILは、東京大学教授の坂村健氏との共同研究で住居に“モノのインターネット(Internet of Things:IoT)”を活用する「LIXIL IoT Houseプロジェクト」を始める。プロジェクトは第1期(2015~2016年)に社員モニター20棟での予備実験と検証実験、第2期(2016~2017年)に実証環境の構築、第3期(2017年~)に実際に実証実験で有効性を検証するという3期に分けて進められる。

 新プロジェクトを起ち上げた背景について代表取締役社長兼最高経営責任者(CEO)の藤森義明氏は、「当社は建材、住設商品に取り組んできた。世界がデジタル化によって大きく変わる中、社内の文化革命を起こさなければならない。それを踏まえて重要な実験プロジェクトだと捉えている」と社内変革に向けた新しい取り組みだと説明した。

藤森義明氏
LIXIL 代表取締役社長兼CEO 藤森義明氏
二瓶亮氏
LIXIL 取締役 専務執行役員 R&D本部長 二瓶亮氏
坂村健氏
東京大学大学院 情報学環 ユビキタス情報社会基盤研究センター長 坂村健氏

 今回、共同で実験に取り組む東京大学大学院 情報学環 ユビキタス情報社会基盤研究センター長の坂村氏は、「IoTハウスは、IoTという言葉がなかった30年前から取り組んでいる。これまでのIoTハウスは部材が特注だったために高価だった。今回は建材を提供するLIXILとのプロジェクトであり、大量生産で低コストなIoTハウスを実現できる。これまでの研究知見を全て取り入れ、世界最高の住宅を作りたい」とプロジェクトの意義を強調した。

 IoT Houseでの売り上げ目標などは明らかになっていないが、プロジェクトにかかるコストは「10億円程度となるのではないか」(藤森氏)という。

課題は山積み

 LIXILでは2009年から自社商品に生活研究ノウハウ、センサ、ネットワーク技術などを取り込んだ検証実験住宅「U2-HOME(ユースクウェアホーム)」を展開している。今回のプロジェクトは、さらに新しい技術を取り込み、「LIXILだからできる、住生活の未来を追究する試み」(取締役 専務執行役員 R&D本部長 二瓶亮氏)と位置付けている。

 「例えば排泄物には、個人の健康情報がたくさんつまっている。トイレにセンサを導入し、情報を入手して住まう人の健康に関する情報獲得のために住宅設備を活用できる。また、家庭内で起こる事故の件数は、交通事故の死者数を上回る件数となっている。IoTで獲得した情報で人の動きを見守る。また、住宅そのものの健康状態を把握する、センサから得た情報を外部のコミュニティーにつなげるなど、住宅設備や建材の総合メーカーである当社だからこそできるIoTがある」(二瓶氏)

 ただし、住設備とIoTの関係について「家は30年40年使い続けていくもの。IoTは日々技術進化していくものであり、寿命が全く異なる。住宅にIoTを取り入れる場合、住宅の寿命と同じ期間使い続けていけるものである必要がある。また、停電時に機能しなくなるのではなく、住んでいる人をサポートする機能を持つことができないかなど、研究すべき課題は多数ある」(二瓶氏)ことも事実だ。

 LIXILでは、いつまでも使い続けられる、プライバシーが守られること、非常時でも困らないこと、簡単に設置して簡単に使えることなどについて、検証しながら課題を克服する方法を模索していく。

 2015年からスタートする第1期は、構想と予備実験の段階と位置付ける。モニターを社内から募集し、20棟程度の実験棟を建設。センサ位置の最適化、データ取得と分析、機能やサービスを検討する。

 第2期は実証環境構築期と位置付け、理想モデルに基づくコンセプトハウスと実証環境を構築する。センシング技術の開発、IoT建材の開発と検証、住環境制御の研究などを進めていく。

 第3期は機能拡充と検証期。IoTハウスの機能やサービスを拡充するとともに、実証実験で有効性を検証する。坂村氏のデザイン、監修によるコンセプトハウスを2017年に竣工させる。IoTハウスの理想モデルの具現化、LIXILのコンセプト発信なども進めていく。

 坂村氏は、「1989年には竹中工務店グループの中にTRON電脳住宅バージョン1を、2004年には豊田中央研究所内にバージョン2を建設した。今回は3度目となるが、ネットワークケーブルが必要なくなり、各建材が直接ネットワークにつながる。排泄物の情報を活用するといったことができるのは、住設備を提供しているLIXILだからこそできること。基本的な技術については、全てオープンアーキテクチャとして開放できる情報については積極的に開放していきたい」と話す。

 今回のプロジェクトに対し藤森氏は、「毎年、ダボス会議に出かけて世界の経営者の話を聞いているが、われわれのライバルはTOTOではなく、今後はGoogleがライバルになってくる可能性があることを実感している。そこに向けて社内文化をどう変えていくことができるのかは大きな課題」と話し、今回のプロジェクトを大々的にアピールする狙いの一つは社内に対する呼び掛けだと説明した。

実証実験の内容
実証実験の内容

ZDNet Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事を読んだ方に

関連ホワイトペーパー

連載

CIO
デジタル“失敗学”
IT部門の苦悩
Rethink Internet:インターネット再考
インシデントをもたらすヒューマンエラー
トランザクションの今昔物語
エリック松永のデジタルIQ道場
研究現場から見たAI
Fintechの正体
米ZDNet編集長Larryの独り言
大木豊成「仕事で使うアップルのトリセツ」
山本雅史「ハードから読み解くITトレンド放談」
田中克己「2020年のIT企業」
松岡功「一言もの申す」
松岡功「今週の明言」
内山悟志「IT部門はどこに向かうのか」
林 雅之「デジタル未来からの手紙」
谷川耕一「エンプラITならこれは知っとけ」
大河原克行「エンプラ徒然」
内製化とユーザー体験の関係
「プロジェクトマネジメント」の解き方
ITは「ひみつ道具」の夢を見る
セキュリティ
「企業セキュリティの歩き方」
「サイバーセキュリティ未来考」
「ネットワークセキュリティの要諦」
「セキュリティの論点」
スペシャル
ざっくりわかるSNSマーケティング入門
課題解決のためのUI/UX
誰もが開発者になる時代 ~業務システム開発の現場を行く~
「Windows 10」法人導入の手引き
ソフトウェア開発パラダイムの進化
エンタープライズトレンド
10の事情
座談会@ZDNet
Dr.津田のクラウドトップガン対談
Gartner Symposium
IBM World of Watson
de:code
Sapphire Now
VMworld
Microsoft WPC
Microsoft Connect()
HPE Discover
Oracle OpenWorld
Dell EMC World
AWS re:Invent
AWS Summit
PTC LiveWorx
吉田行男「より賢く活用するためのOSS最新動向」
古賀政純「Dockerがもたらすビジネス変革」
中国ビジネス四方山話
ベトナムでビジネス
米株式動向
日本株展望
企業決算
このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]