Oracleでアプリケーション製品開発のグループバイスプレジデントを務めるRajan Krishnan氏によると、法人顧客は経営資源管理(ERP)や人的資本管理(HCM)といった製品によって提供される水平展開能力とともに、業界における垂直展開能力も追い求めているという。
Krishnan氏は「企業にとって、クラウド上に単一の能力、例えば営業支援システム(SFA)やHCMを置くだけでは十分ではない」と述べるとともに、「企業は、標準に基づく技術によって裏打ちされ、プロセスやデータをまたがったシームレスな統合を実現するエンドツーエンドの業務プロセスを必要としている」と述べている。
Oracleのクラウド戦略は、同社の「Oracle Fusion Applications」、特にERPに軸足を置いたものとなっている。Dover氏によると、過去の実績を見れば、クラウドに最初に移行する業務はHCMとCRMが多く、財務関係は後回しにされていたが、その傾向は変わり始めているという。そして、会計システムのようなアプリがクラウドに移行すれば、他のアプリについてもクラウドに移行できるという自信につながっていくはずだ。
CLSAのEd Maguire氏によると、「Oracleはもともとオンプレミスで動作していたアプリをクラウド調達モデルに移行するという取り組みに力を入れるようになってきている。これには顧客エクスペリエンスやHCMだけでなく、従来はオンプレミスで運用されていたERPやサプライチェーン管理(SCM)も含まれている」という。
また、SAPのアプローチがよりハイブリッドなものとなっている(これについては後述する)一方、Oracleのそれはよりパブリッククラウドに向けたものとなっている。Dover氏は、同社がプライベートクラウドもサポートしているとはいえ、新規顧客の大半はパブリッククラウドを選択していると述べている。
Oracleを待ち受ける難問は、同社の顧客をクラウドに向かわせることだ。多くの顧客にとって、クラウドの経済はまだ目新しいものであり、設備投資費用(CAPEX)から運用費用(OPEX)への転換は衝撃をもって受け止められる可能性がある。Krishnan氏によると、Oracleの戦略は、アプリすべてをまとめてクラウドへと移行するのではなく、「選択的に」移行できるよう、顧客を支援することだという。
Stifel Financialの最近の調査では、「Oracleは、同社の50億ドルを超えるアプリケーション保守業務のうち、わずか5000万ドル未満(すなわち1%未満)しかSaaSに移行していない」と指摘されており、Oracleのクラウドビジネスに対する控えめな気質が浮き彫りになっている。
とは言うものの、Oracleの最高経営責任者(CEO)Mark Hurd氏は、同社におけるSaaS関連の売上高が伸びている点を挙げ、2013年から2014年にかけて23%、2014年から2015年にかけて36%増加していると語っている。
さらにDover氏も、Oracleは顧客をクラウドに移行させる目的で、収益を度外視した販売促進活動を実施しており、そういった活動の結果、同社のクラウドやアプリケーションの売上高も増加していると語っている。