「インターネットはキメラのようなものだ」。ミネソタ州立大学ムーアヘッド校で計算機科学の准教授を務めるAndrew Chen氏はこう述べる。「これは、さまざまな要素が融合した化け物だ。最初は強力なものに見え、次第に魅惑的になり、最後に危険な存在になる」。現在のインターネットに対するこのChen氏の見方に反論することは難しい。また2016年にも、状況が悪くなることはあっても、良くなることはないだろう。その理由はこうだ。

6.暗号化は抑止力にならない
この数カ月、米国の法執行機関は暗号ソフトウェアにバックドアを追加することを要求している。予想通り、セキュリティ専門家はこれに対抗し、表面上は勝利しているように見える。しかし、そのことに確信を持てないという人もいる。これは煙幕かもしれないというのだ。
Andy Greenberg氏は、WIREDに掲載した記事「Cops Don't Need a Crypto Backdoor to Get Into Your iPhone」(警察はiPhoneに侵入するのにバックドアを必要としていない)で複数のセキュリティ専門家にインタビューし、そもそもバックドアが必要なのかを尋ねた。米国自由人権協会(ACLU)の主席テクノロジストChris Soghoian氏は、Greenberg氏に対して「米連邦捜査局(FBI)が過去1年にわたって使っていた大げさな表現にもかかわらず、状況はそこまで切迫していない。テクノロジ企業が提供している暗号技術は、ノートPCの窃盗犯からユーザーを保護するためのものだ。裁判所の命令の有無にかかわらず、ユーザーのデータを入手しようとする政府機関を排除するために設計されたものではない」と述べている。
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