被害を最小化するレジリエントセキュリティ

何をすればサイバーセキュリティリスクを把握したことになるのか - (page 4)

熊谷裕志

2015-12-18 07:00

 また、脆弱性だけではなく、現在発生しているサイバー攻撃などの脅威情報についても同様の仕組みを整備する必要がある。中でも標的型攻撃による組織内にある情報資産の大量流出が問題となっているが、攻撃手法も巧妙さを増しており、自組織がこれまでに遭遇した攻撃手法や、公開されている攻撃手法だけでは、自組織の対策を評価するための情報として不足しているといわざるをえない。

 自組織だけではなく、他組織が遭遇した最新のサイバー攻撃情報を入手し、自組織においてその攻撃が発生した場合の影響有無などを常に検証し対応を進めていく必要がある。

 しかし、自組織だけで脅威や脆弱性の情報を蓄積しリスク把握を実施しようとしても、前述のとおりリソース面などの課題があり、途方に暮れてしまう組織も多いのではないだろうか。

 自組織のリスクを洗い出すには定期的な検証が必須であり、最新情報の提供や検証を実施する専門業者などの活用も考慮した上で、自組織にとって効果を最大化できる対策を講じる必要がある。それでも、全ての脅威や脆弱性を取得できるわけではない。特に業界特有の現象なども発生しうるため、自組織だけではなく業界団体レベルでの情報収集の仕組みも活用すべきであろう。

 最近では金融ISACやTelecom ISACなど業種ごとに情報共有する組織や仕組みを構築し、他社で発生しているインシデントもタイムリーに取得できるようになってきた。しかし、これらの組織がある業種も限定的であるため加盟できる組織がなかったり、たとえその業種に該当したとしても組織や売上の規模などが異なるため共有情報の有効性が乏しかったり、必ずしも十分ではない。

 業界、業種間での情報共有が進んでいる米国では、大統領令13691号(官民のサービス情報の共有化推進)により、情報共有分析機関(Information Sharing and Analysis Organization:ISAO)の創設が提唱された。ISAOとは、複数の組織がサイバー攻撃やサイバーセキュリティに関する情報を共有し、共同で分析する組織形態の総称である。ISAOは既存のISACを補完する枠組みであり、柔軟性を持って、より多くの参加者と広範に情報共有することを狙っている。

 つまり、スレットインテリジェンスと呼ばれるものは巷に氾濫しているため、自組織に最適な情報を取捨選択して活用する必要がある。そして、スレットインテリジェンスを最大限に活用し、定期的に自組織を検証するフローを構築できるようになれば、自組織の脆弱な箇所をあぶりだしリスクを明確にすることが容易になり、効果的な対策を講じることができる。

熊谷裕志
PwCサイバーサービス合同会社 スレットインテリジェンスセンター/研究員。ベンチャー企業を経て、2011年にセキュリティ企業に入社。脆弱性の解析や調査研究に従事し、得られた知見をもとにセキュアコーディングの普及啓発に携わる。スレットリサーチラボ立ち上げメンバーとして参画し、サービスメニューの企画・立案コア技術の開発に従事。

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