クラウド移行による運用費用削減は年商規模によって異なる--ノークリサーチ

NO BUDGET 2015年12月10日 10時53分

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 ノークリサーチは12月9日、2015年の国内中堅・中小市場におけるクラウドサービス評価に関する調査・分析の結果を発表した。調査は日本全国/全業種の500億円未満の中堅・中小企業において企業経営もしくはITの導入/選定/運用作業に関わる職責の人物を対象として10月に実施し、700社から有効回答を得た。最も成功したクラウド活用分野は「情報共有」となった。

 最も成功したクラウド利用に該当する業務システム分野を尋ねたところ、例えば年商5億円以上~50億円未満の中小企業層においては、最も多く挙げられたのが「情報共有」(メール、グループウェア、オンラインストレージサービスなど)で35.0%、その他の分野については1割以下にとどまっている。

 本調査では、10分野の業務システムについて、11項目に渡るユーザー企業の評価を集計・分析しており、その一例として年商5億円未満~100億円の3つの年商区分における「運用費用削減」に関する評価結果をプロットしたのが下のグラフ。それぞれの年商区分で、異なった傾向が見てとれる。


(ノークリサーチ提供)

 年商5億円未満の企業層では「期待:有」の割合が7割に達するものの、「期待:有、成果:×」が27.3%を占め、「期待:有、成果:○」の割合は42.4%にとどまっている。クラウドを選択することで運用費用を削減したいと考える企業は7割に達するが、実際に実現できている割合は半数強(7割のうちの4割)にとどまっているということになる。

 一方、年商5億円以上~50億円未満の企業層では「期待:有」の割合が5割未満にとどまっており、必ずしも大多数の企業がクラウド利用に対して運用費用の削減効果を期待しているわけではないことが確認できる。

 同年商帯は年商5億円未満と比べて業務システムの導入率や活用率が高く、クラウド移行に相応の労力や費用を要する一方で、年商50億円以上の企業層ほどシステム規模は大きくないため、クラウド事業者に預けることで得られるメリットが得にくい場合もあるものと考えられる。

 そして、より大きな中堅企業層では「期待:有、成果:○」の割合が年商50億円未満と比べて高い。ただし、年商50億円以上の企業を区分していくと、企業規模が大きくなるにつれて「期待:有、成果:○」の割合は低くなり、「期待:有、成果:×」の割合が高くなる。

 企業規模が大きくなるにつれて業務システムも複雑度になり、クラウド移行による運用費用削減を実現するための難易度が高くなることが要因と考えられる。

 調査では、さらに「最も成功したクラウド利用」に該当する具体的なサービス名称も、自由回答形式で尋ねている。実際の回答件数は限られるものの、以下のような名称が挙げられた。

情報共有

 「Google Apps」「cybozu.com」「Office 365」などが挙げられる。「情報共有」の代表例であるメールやグループウェアは多くの社員が利用するアプリケーションでもあるため、「社員が使い慣れたアプリケーションを変えたくない」という慣れに起因する変更障壁が存在するが、逆にオンプレミス形態と同じものを利用し続けられればクラウド移行は円滑に進む。

 実際、cybozu.comは「サイボウズOffice」、Office365は「Outlook」といったように、これら2つのサービスはオンプレミス形態で多く導入されているアプリケーションの使い勝手を継承できている。

 一方、Google Appsについては販社/SIerが提供するアドオンの充実が大きな特徴の1つとなっている。各種アドオンの適用によってユーザ企業に適した機能や使い勝手を実現できるという点も、クラウド活用を成功させる要素として有効であると考えられる。

顧客管理

 「Sales Cloud/Service Cloud」(Salesforce.com)や「CRMate」(富士通)などが挙げられる。中堅・中小企業における顧客管理システム活用は社内を意識したものが依然として少なくない。営業日報の管理などを通じて営業社員の活動を効率化するSFA(Sales Force Automation)はその代表例だ。

 一方、大企業では「ECサイトである商品を閲覧したが購入まで至らなかった顧客に対して、翌日に該当の商品の魅力を伝える販促メールを送る」といったように顧客の嗜好や行動を踏まえた個別対応業務を自動化するMA(Marketing Automation)の活用が進みつつある。

 人員が限られる中堅・中小企業においては、社内を意識したSFAだけでなく、こうした社外を意識したMAへの取り組みも重要と考えられる。販促メール送信などのシンプルなサービスは既に存在しているが、比較的手軽に導入可能なクラウド形態のMAが登場すると、中堅・中小企業の顧客管理におけるクラウド利用もさらに進むのではないかと予想される。

ZDNet Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事を読んだ方に

関連ホワイトペーパー

連載

CIO
IT部門の苦悩
Rethink Internet:インターネット再考
インシデントをもたらすヒューマンエラー
トランザクションの今昔物語
エリック松永のデジタルIQ道場
研究現場から見たAI
Fintechの正体
米ZDNet編集長Larryの独り言
大木豊成「仕事で使うアップルのトリセツ」
山本雅史「ハードから読み解くITトレンド放談」
田中克己「2020年のIT企業」
松岡功「一言もの申す」
松岡功「今週の明言」
内山悟志「IT部門はどこに向かうのか」
林 雅之「デジタル未来からの手紙」
谷川耕一「エンプラITならこれは知っとけ」
大河原克行「エンプラ徒然」
内製化とユーザー体験の関係
「プロジェクトマネジメント」の解き方
ITは「ひみつ道具」の夢を見る
セキュリティ
「企業セキュリティの歩き方」
「サイバーセキュリティ未来考」
「ネットワークセキュリティの要諦」
「セキュリティの論点」
スペシャル
ざっくりわかるSNSマーケティング入門
課題解決のためのUI/UX
誰もが開発者になる時代 ~業務システム開発の現場を行く~
「Windows 10」法人導入の手引き
ソフトウェア開発パラダイムの進化
エンタープライズトレンド
10の事情
座談会@ZDNet
Dr.津田のクラウドトップガン対談
Gartner Symposium
IBM World of Watson
de:code
Sapphire Now
VMworld
Microsoft WPC
Microsoft Connect()
HPE Discover
Oracle OpenWorld
Dell EMC World
AWS re:Invent
AWS Summit
PTC LiveWorx
より賢く活用するためのOSS最新動向
古賀政純「Dockerがもたらすビジネス変革」
中国ビジネス四方山話
ベトナムでビジネス
米株式動向
日本株展望
企業決算
このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]