海外コメンタリー

IBMによるIoT戦略の今--新部門設立やパートナーエコシステム確立に見る動き - (page 2)

Jo Best (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 村上雅章 野崎裕子

2015-12-16 06:30

 歴史を振り返ってみると、IoTがITバイヤーの注意を実際に集め始めたのは、ベンダーの強力な後押しがあったここ数年のことだ。Stanford-Clark氏はこれをウェブの黎明期になぞらえている。当時、顧客はEビジネス戦略を展開していくべきかどうかをサプライヤーに照会していた。

 「われわれの元には、さまざまな業界の顧客から『IoTとは何なのか教えてもらえますか?IoTに関するワークショップに参加できますか?これはうちの業界にとってどんな意味があるのですか?』という照会の電話がかかってくる。20年前は、『ウェブというものがこれから重要になっていくと耳にしたのですが』という照会が多かった」(Stanford-Clark氏)

 一部の業界は既に、業界を挙げてIoTに取り組んでいる。自動車業界もその1つだ。IBMとPSA Peugeot Citroënは2014年、自動車からのデータをIBMのビッグデータ/アナリティクスシステムに取り込むことで、車自体の情報や運転状況、周囲の環境といったデータをPSA Peugeot Citroën側で把握できるようにし、問題の発生前に対応できるようにしたり、ドライバーに対してコネクテッドカー向けのサービスを提供できるようにするという提携を発表した。その後2015年に両社は、サードパーティー企業がコネクテッドカー向けに独自のサービスを提供できるようにするための、7年にわたる提携を新たに締結した。

 同様に、エレベータのメンテナンス業界では、IoTデバイスからのデータを用いた予測分析を実施して、近いうちに調子が悪くなる、あるいは故障しそうなエレベータを予測し、実際に故障が発生する前に保守担当者を派遣して対応している企業もある。こういった考え方は、他の分野にも適用できるだろう。例えば、白物家電の関連企業であれば同様の方法で洗濯機の故障を防いだり、ユーザーが洗剤を使い切る寸前に追加の洗剤を配達したり、電気代が最も安くなる時間帯に洗濯を行うといった事例を思いつけるはずだ。

 一見するとIoTには不向きな垂直市場でも、コネクテッドデバイスの可能性を探る試みが始まっている。Stanford-Clark氏は金融業界の例として、IoTデバイスによる空き家の監視で泥棒や不法入居者の侵入を防いだり、水道管の監視で水漏れが発生する前に修理して浸水被害を未然に食い止めるといったものが考えられると述べた。

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