IoTは、多くの企業にとってまだなじみのないものかもしれないが、その可能性を見定めようとしている企業も多いだろうという点を考えた場合、メーカーコミュニティとのつながりを作り上げることは、企業をIoTの世界にいざなうための第1歩となる可能性がある。
Stanford-Clark氏は、IBMが「エンジニアリングコミュニティやメーカーコミュニティ、すなわちIoTデバイスのプロトタイプを製作している人々との提携を進めてきている(中略)それによって、彼らのプロジェクトに合ったカスタムハードウェアの開発方法を見出そうとしている」と述べた。「Arduino」や「mbed」「Raspberry Pi」といった製品を自宅のプロジェクトで使用しているような人たちは、その知識を用いて業界に特化した製品を開発できるようになる。同氏は「週末の休みに使用しているテクノロジに基づいて、最初のプロトタイプを製作できるというわけだ」と述べた。
IBMはこれらの点を念頭に置き、最近もさまざまなIoT企業と提携している。同社は2月にチップ設計企業のARMと提携し、その後9月にさらなる提携に踏み込むとともに、IoT管理プラットフォームを手がけるJasperとも提携し、11月にはアウトソーシングを手がけるHCL Technologiesと提携している。
Stanford-Clark氏は「エンドツーエンドのものごとすべてを1社単独で実行するのは無理がある。われわれはかなり以前からその事実を認識している。われわれは、業界の流れを決定するものやそれに準じるものを作り出したいと考えることなどないうえ、業界における専門知識も持ちあわせていないため、そういったものを作り出す人たちとの提携を業界内で進めてきている。その結果、パートナーの大規模なエコシステムを持つに至ったというわけだ」と述べるとともに、「われわれが何かを生み出すのではない。パートナーを信頼し、彼らに開発を任せ、IBMのクラウドインフラを使ってもらうのだ」と述べた。
The Weather CompanyのBtoB部門との提携(企業の意思決定に用いられる気象情報を提供するサービスのプラットフォームをIBMのクラウド上に移行するというもの)は、それだけでは終わらなかった。この提携からおよそ半年後、IBMはThe Weather CompanyのBtoB資産を買収すると発表した(買収金額は推定20億ドル)。
この買収はIBMの視点に立って見ると興味深く感じられる。IBMは従来、顧客が自らのデータを処理するためのシステムとサービスを販売している。それが今や、The Weather Companyから収集した情報を顧客に販売するとともに、IBMが独自に組み合わせた情報を顧客側で分析できるようにもしようとしている。
Stanford-Clark氏は「これはIBMにとってまったく新しいことであり、IoT関連の事業を別部門として独立させた理由の1つでもある。われわれは従来のIBMでは考えられなかったようなことを実現しようとしている」と述べた。