POSレジという「出島」の出現?
既存のクレジットカードならすでに比較的多くの場所で中国銀聯のカードが使える――日本の大手クレジットカード会社や銀行が提携しているようで(詳しくはwikipediaの項目を参照願いたい)、あのステッカーが貼ってあるところを自分でもふとした場所で見かけた記憶もある。
それを前提に考えると、例えば「銀聯カード」のステッカーが貼ってあるところでは、最初のうちはお客さんがiPhoneを取り出して支払いしようとする度に「カードは使えるんですが、iPhone(Apple Pay)は使えません」とお店の人が頭を下げることになりかねない。iPhoneが店頭にたくさん並んでいる大手家電量販店などでもそうしたことが起こり得る(「頭を下げるのもサービス業の仕事のうち」くらいの心構えがある方なら気にならないかもしれないが)。
あるいは、そういうことが何度も度重なって、小売店側も「では(ソロバン勘定も十分合いそうだから)Apple Payを使えるようにしよう」となったとすると、今度は「観光客など外国の銀行口座とカードを持つ人たちだけが、日本のなかでApple Payを使える」ということになる。つまり、街中の思わぬところに「出島」(でじま)が出現、というと少し大げさかもしれないが、そんなちょっと不思議な状況が生じそうと思えてしまう。
「Apple Pay」が使えなくても、普段の生活にはほとんど支障がなさそうな筆者はそれでも一向にかまわないけれど、同時に「せっかくiPhoneを(安くはコストを支払って)使っているのに…」という釈然としない感じは消えないかもしれない…。
筆者のことはさておき……。
問題は「なかなか普及が進まない、利用率が上がらない」といった話もあるApple Payが、それでも徐々にいろいろな国で使えるようになり初めているということだろう。2014年秋の米国に続いて、最近では英国やカナダでも同サービスが始まっている(*7)。
また「現地の銀行とAppleとが手数料でもめている」といった話がしばらく前に伝えられていたオーストラリアあたりでも、どうやら話がまとまったらしく、「今月中にはスタート」というニュースも出ている(*8)。つまり、潜在的な利用者は少しづつ増えている、あるいはその下地だけはできているというようだ。
日本ほどiPhone好きな国民もいない(iPhoneのシェアが日本ほど圧倒的に高い国はほかにない)のに、それを差し置いてほかの国からサービスが始まるというのもちょっとおかしな話にも思える(それも「当事者間の事情」によるものなのだろうが)。
しかし、いずれにせよ日本はいみじくも政府が「海外からの観光客誘致」を国策に掲げ、「平成32年までに訪日客年間3000万人超」(*9)という具体的目標まで示している国であることなども考えあわせると、「当事者間の事情」もいろいろあろうが、なるべく早期にApple Payを使えるようにすることが望ましいと思う次第。それが「貴重な外貨」を少しでも多く稼ぐ(海外からの観光客に少しでも多くのお金を落としていってもらう)ことにつながるのはいうまでもない。
なお、この中国での話とは別に、Appleが「Messenger」アプリを使ったP2P(個人間)送金の仕組みをやろうとしているという話もある(*10)。
今のところ、ユーザーの残高管理(与信行為)といった面倒なこと(規制当局との折衝などが絡む金融分野の仕事)は外部の銀行に任せるつもりで話を進めているようだが、この計画がもしも実現するようだと、小売店も単なるiPhone/iPadの「1ユーザー」となるはずで、そうなるとカード決済事業者などが「中抜き」される可能性も思い浮かぶが、この辺のところはもう少し調べてみないとよくわからない。