2つの不足機能を強化する
自己評価機能とマーケティング機能が欠如していると、「自らを評価していないから、自分自身でも良さ・悪さが分からない」→「自らのよさ・悪さが分からないから、経営者やユーザー部門に良さをアピールできない」→「経営者やユーザー部門は、IT部門が適切な運営を行っているかが分からないから信頼できない」→「信頼されないからコミットメントや協力が得られない」という負の連鎖に陥ることになります。
IT部門は、自己評価機能とマーケティング機能を自部門のマネジメントに組み込むことで、負の連鎖を断ち切り、それと正反対の正の連鎖へと転換していかなければなりません。すなわち、図2に示すような、自己評価機能とマーケティング機能のループを何度も繰り返し回していくことが重要となります。
やるべきことを確実にやるというのでは不十分です。確実に遂行したら、自己評価機能によってその成果を適正に評価し、さらに改善するというPDCAサイクルを回していくことが求められます。こうした改善活動の状況や、その成果をマーケティング機能によって社内に周知することで、さらなる信頼を勝ち得ていけるのです。情報を発信すればするほど、それに対する有益なフィードバックも返ってきます。
それに応えることで信頼が高まり、さらなる高度や要求が生まれます。このような地道な活動の繰り返していくことで、ユーザー部門や経営者との関係が深まり、企業のIT活用力を底上げできるのです。
図2.2つの不足機能のスパイラルアップ
- 内山 悟志
- アイ・ティ・アール 代表取締役/プリンシパル・アナリスト
- 大手外資系企業の情報システム部門などを経て、1989年からデータクエスト・ジャパンでIT分野のシニア・アナリストとして国内外の主要ベンダーの戦略策定に参画。1994年に情報技術研究所(現アイ・ティ・アール)を設立し、代表取締役に就任。現在は、大手ユーザー企業のIT戦略立案のアドバイスおよびコンサルティングを提供する。最近の分析レポートに「2015年に注目すべき10のIT戦略テーマ― テクノロジの大転換の先を見据えて」「会議改革はなぜ進まないのか― 効率化の追求を超えて会議そのもの意義を再考する」などがある。