Dr.津田のクラウドトップガン対談

メール添付が禁止になる日--オンラインストレージ市場は巨大化するか - (page 4)

取材・構成 吉澤亨史 怒賀新也 (編集部)

2016-01-08 07:00

津田氏 佐々木さんが今おっしゃったこと、本来はセキュリティというものが世の中には認識されていて、やらないといけないことだったんです。でも、これまで力を入れていなかった。そこに多くの人が気がついたわけです。

 日本以外の先進国の多くは以前から番号制を採用していました。少子高齢化と人口減を受けて欧州の国々は、どうすれば政府として税収を増やせるかを考えています。その具体策の1つが、番号制によって、行政を効率化してコストを減らすことと徴税の適正化することです。日本はそこで立ち後れていたので、急きょマイナンバー制度を始めることになったわけです。

 これまで力を入れていなかったことに、これからは全力で取り組まなければなりません。そこには当然ギャップもあるし、リスクも発生します。特にお金になる情報が絡みますから、世界中の犯罪のプロが狙ってきます。でも、まだ民間企業は準備が整っていません。PCの中には佐々木さんがおっしゃったように個人情報がたくさん入っています。そこで、そういった情報を見つけ出して安全な場所に移動する、それを手間をかけずに自動化するような解決策が必要になってくるということですね。

 ただ、自動化や簡易化によって、今まで軽く考えていた人たちにとって大きな負荷がかかるようでは普及しないので、少しでも低コストで、楽にこの局面を打開するようなサービスが必要になってきます。それが実はマーケットでもあり、1つの付加価値でもあります。そこで自動化や簡易化といったITの特徴を生かしてマイナンバー対応をする必要があります。

写真の容量増などメールで対応しにくい状況が増える


佐々木氏 もう1つ必要な議論があります。多くの場合、セキュリティを導入するとユーザーは不便になるわけです。今までできたことができなくなってしまう。これはメッセージも同じで、今はSNSをはじめコミュニケーションの手段がたくさんあります。その中で広く普及しているものが、一番使いやすくて快適なわけです。それがセキュリティの観点で別のものを使わなければならないとなると、使う側にもメリットがないと使われなくなってしまいます。

 これがすごく重要で、今は確かにマイナンバーが主になっているのでセキュリティの話から入っていくことが多いのですが、もともとオンラインストレージというのは実は普段の業務改善です。機密性の高いファイルや巨大なファイルも含めて、添付メールで送れないような電子ファイルは多いです。写真データも巨大化していますし、それを今日撮影した写真を全部送るとなると、電子メール以外の方法を考えなければなりません。

 逆に、業務に必要な情報をお客様からもらうという場合も困ります。ある人はメールで送ってくるし、ある人は「宅ふぁいる便」のようなサービスを使って送ってくる、ある人はUSBメモリを送ってくる。その整理の手間だけでも大変です。そこをカバーするのがオンラインストレージなのです。巨大なファイルや機密性の高いファイルでも安全に送ることができるし、受け取ることもできます。受信したファイルは自動的にフォルダに仕分けられます。

 オンラインストレージを使うことで、今まで煩雑にやっていた業務を簡素化できるのです。電子的に利便性と安全性を担保しながら、大きなコスト削減にもなる。そういったことをユーザーに訴求しながら、マイナンバーも含むセキュリティ対策もというふうに持っていかなければ浸透しません。そういう意味で、業務向けのオンラインストレージをうまく使うと、利便性とコスト効率を両立できる可能性があります。

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