中国Lenovoグループが米IBMのx86サーバ事業を買収してから1年余り。果たしてどんな状況なのか。同社幹部に聞いてみた。
IBMから買収後に短期間で増収増益基調へ
「当社のx86サーバ事業は増収増益を確保できるようになってきた。2016会計年度(2016年3月期)には売り上げ規模もグローバルで50億ドルに達する見込みだ」
筆者の取材に応じるLenovoバイスプレジデント兼アジア太平洋地域COOのAmar Babu氏
こう語るのは、Lenovoバイスプレジデントで日本を含むアジア太平洋地域のCOO(最高執行責任者)を務めるAmar Babu(アマール・バブ)氏だ。
Lenovoが2014年10月にIBMのx86サーバ事業を買収してから1年余り。昨年1月に買収を発表してから成立するまで時間がかかったこともあり、成立時点では市場競争においてかなりの逆風にさらされていた。
だが、筆者の取材に応じたBabu氏によると、同社の2016会計年度に入った2015年4月からは増収増益基調に乗り、第3四半期となるこの10~12月では第2四半期に比べて売上高が9%増と、2桁成長をうかがうところまで回復したという。
なぜ、短期間でx86サーバ事業を好転させることができたのか。Babu氏は、「IBMから移ってきた人員がLenovoに溶け込み、早い段階でチーム力を発揮できるようになってきた」「LenovoがPC事業で培ってきたボリュームビジネスによる調達・購買・生産・物流における高効率の強みをx86サーバ事業にも適用した」「IBM時代と同等以上の製品やサービスにおける品質を貫き、顧客や販売パートナーから引き続き信頼を得ることができた」といった点を挙げた。
中でも高効率はLenovoならではの強みだ。関係者によると、この事業を継承した直後の四半期、売り上げは厳しかったものの、利益だけは最初から確保したという。そこで、「やはり高効率の強みを生かせたのが最大の要因か」と聞いたところ、Babu氏は「高効率もさることながら、x86サーバにおいても高品質を生み出す技術力について、顧客や販売パートナーから信頼を得られたことが最大の要因だ」と強調。技術力を前面に押し出したい思惑がうかがえた。
「ハイパースケール」と「ハイパーコンバージド」に注力
Babu氏はさらに、x86サーバ事業における今後の戦略について、「品質の維持・向上」「新規分野の開拓」「ボリュームビジネスによる効率化の一層の推進」「販売パートナーとの連携強化」といった点に注力する考えを明らかにした。
この中で筆者が気になったのは、新規分野の開拓だ。Babu氏によると、そのキーワードは「ハイパースケール」と「ハイパーコンバージド」。ハイパースケールのx86サーバを投入することで大規模なデータセンター需要に対応する一方、ハードウェアとソフトウェアを統合したハイパーコンバージドシステムも手掛けて幅広いクラウド需要を取り込んでいく考えだ。
ハイパーコンバージドシステムについては、この分野の有力ベンダーである米Nutanixと先ごろ提携し、LenovoのハードウェアとNutanixのソフトウェアを組み合わせた製品を展開していく構えだ。Babu氏は、「ボリュームビジネスが決め手になる製品展開だけでなく、今後はハイパースケールおよびハイパーコンバージドの分野での事業展開が、競合他社との差別化ポイントになる」と自信をのぞかせた。
Babu氏のこれまでの話によると、LenovoはIBMから買収したx86サーバ事業を1年余りで完全に好転させ、次なる戦略展開も明確に描いているようだ。
ただ、x86サーバ市場は、グローバルではHewlett Packard Enterprise(HPE)やDell、日本でも両社の日本法人に加えてNECや富士通といった競合がひしめき合っている激戦区だ。そうした中でLenovoがどのように存在感を高めていくことができるか。大いに注目しておきたい。