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クラウドで切り拓け〝超ローカル新聞〟の未来--岩手・東海新報

構成・取材 怒賀新也(編集部)

2016-01-03 07:30

震災時に有名になった奇跡の1本松。現在は人工的な処理をほどこし、地元のモニュメントとしての役割を担っている
震災時に有名になった奇跡の1本松。現在は人工的な処理をほどこし、地元のモニュメントとしての役割を担っている

 2011年3月の東日本大震災以来、東北各県は復興への道のりを歩んでいる。少子高齢化も重なり、商業施設や医療機関など居住者が必要とするインフラの維持は、被災地だけでなく、日本各地の自治体が抱える課題でもある。

 そのインフラの1つとして不可欠なのが、各地の様子を専門的に伝える地元メディアの存在である。特に、全国紙や地方紙、各第一県紙などが扱わない地元のニュースを掲載する「超地元メディア」は居住者にとって不可欠。地元政治の監視や治安の悪化防止といった間接的な効果も期待されているという。

 こうした超地元メディアの1つに、岩手県大船渡市の新聞社である東海新報社がある。地元密着を掲げる一方で、電子版によって県内はもちろん、県外を含めた幅広い読者の獲得を目指す。超地元メディアのあるべき姿と具体的な展開方法を模索する、4人の女性からなる東海新報電子版プロジェクトメンバーに寄稿してもらった。

震災で悪化した、地域を取り巻く環境

(東海新報社記者/鈴木英里)

東海新報社記者/鈴木英里
東海新報社記者/鈴木英里氏

 読売、毎日、産経、日経、朝日。これら「五大紙」と呼ばれる全国紙以外に、日本には「ブロック紙」や「県紙」、そしてゆうに100を超える数の「地域紙」があります。地域紙はご町内の話題やローカル情報を細かに掲載する、地元密着のメディア。広域で発行する大手紙とはその役割を異にする媒体です。

 「『東海新報』…というと、愛知県の会社ですか?」

 よくそう尋ねらますが、まぎらわしくてすみません。弊社は岩手県大船渡市にある、社員40人弱の地域新聞社です。紙名の〝元ネタ〟になったのは、郷土の歌人・石川啄木の「東海の小島の磯の白砂に…」という歌。大船渡市・陸前高田市・住田町という本県沿岸南部(中央から見ると文字通り「東のほうの海」)──通称「気仙地方」をエリアに日刊紙を発行しています。

 さて、大船渡・陸前高田と聞いて、今なお「ああ、東日本大震災の」とピンと来る方はどれくらいいらっしゃるでしょう。

 大津波により、東北沿岸市町村の状況は一変しました。いえ、震災前から抱えていた問題が、いっそう顕在化したと言ったほうが正確でしょうか。人口減少、第一次産業の衰退、少子高齢化の加速──「地方は日本の縮図」といいますが、そこをさらに煮詰めた場所が東北の被災地と言えます。

 弊社は昭和35年のチリ地震大津波で被災、その教訓を得て高台へ移転したため、今回は津波被害こそ免れました。ですが購読者のみならず広告主も被災したわけですから、経営的には厳しい状況に置かれました。

 幸いにして、一時は半分以下にまで落ち込んだ購読者も、現在は震災前の水準近く(現状1万3700部)まで回復。「やはり東海さんがなくては」と、地元の皆さんに愛していただいていることをひしひし感じます。また、郵送購読者が激増したことも嬉しい誤算でした。在京出身者や当地へボランティアで来た方が、地元の情報が欲しいと読んでくださるケースが多いのです。

 けれども遠方の読者へ新聞をお届けするには、1~3日程度の遅れがあることは事実。ネットでリアルタイムの情報が入手できる現代、この時間的ロスは新聞の「価値」を著しく低下させることになります。

 また、取材時に―とりわけ若い方や核家族から―「新聞は取っていない」と聞く場面が年々増えてきたと感じます。少子化と人口減少が震災によってさらに加速した中、今以上に読者が増えるという楽観的な観測は持てようがありません。

 地域に必要とされていることを感じる一方、「そこにあぐらをかいたままではいけない」という肌感覚は鋭くなるばかりだったのです。

地元の公園に遊具が設置されたことを伝える
地元の公園に遊具が設置されたことを伝える

「電子化」という大海へこぎ出す

 「新聞が本当に読まれなくなってから対策を練り始めたのでは遅い。電子化によってどんな道が拓けるのか、取り残される前に模索しておかねば」

 社内で「電子版を出す」という話が聞こえ始めたのは、3年ほど前のこと。かねて〝時代の要請〟を感じていた弊社社長・鈴木英彦が、電子化実現を具体的に検討し始めたのもこの震災がきっかけだったようです。

 しかしそれは「渋々」のスタートだったわけではなく、「電子化によってもっと地域紙は住民の役に立てる、もっと読者に豊富なコンテンツを提供できるはずだ」という〝希望〟を持って始まった取り組みでした。

 弊社が電子新聞をリリースするにあたり尽力いただいたのは、クラウドコンサルティング企業であるNCRI(東京都港区、津田邦和社長)と、システム開発のマルマンコンピュータサービス(青森県青森市、長内睦郎社長)、そしてテラソリューション(青森県弘前市、鈴木敏弘社長)の3社です。

 「紙面をPDFにし、自社ホームページで有料公開する」程度では、電子化とは呼べません。情報をインターネット上に保存し、世界中と共有する「クラウド」を活用して、「紙にはできないことをする」──それが弊社の考える電子化でした。そのためのサポートとアドバイスを各社から頂戴しています。

 われわれは「ハイパー・ローカル・ニュースペーパー(HLN)」と銘打ったプロジェクト船を、大海原へ解き放ちました。該当地域以外では、読まれる価値がないはずのローカル紙。その電子化には、一体どんな可能性が秘められているのか…まるで〝お宝〟を探し求めるような気持ちで、ワクワクしながら航海へと乗り出したのです。

 この先にはどんな展望が拓けていくのでしょう? 今回はプロジェクトメンバー企業である3社から、「クラウドとメディア」という観点から語ってもらうことにしました。

東海新報電子版のトップページ
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