――リレーショナルデータベース(RDBMS)分野では歴史的にOracle Databaseが強いが、長期的にAuroraはOracleのリプレースを狙うのか。製品の位置付けは。
瀧澤氏 「Amazon RDS」ではOracle、SQL Server、MySQL、MariaDB、PostgreSQLを提供しており、Auroraはその1つです。顧客は用途に合わせて選択できます。Oracle Databaseを使いたいならRDS上のOracle Databaseを利用できるし、運用が複雑で変更を加えたくない場合はEC2上にOracle Databaseを乗せ、その後時間をかけてクラウドネイティブなシステムを変更していくという選択肢もあります。
技術本部 エンタープライズソリューション部 部長/シニアソリューションアーキテクト 瀧澤与一氏
Auroraでのわれわれのメッセージは、基幹のデータベースをクラウドに移す際のハードルを下げることです。
RDS上のOracle Databaseでは、最新版をすぐにRDS上でも利用してもらえるようにするなどの取り組みを継続しており、RAC構成の検証に必要な構築情報の提供などの支援も実施しています。マイグレーションではラスベガスで実施した「re:invent 2015」で、「Database Migration Service」をプレビュー発表しました。既存データベースからAWS上に移行するサービスで、逆も可能です。
――ミッションクリティカルの領域に拡大しているが、統合ではパートナー戦略が重要になる。ここでの取り組みは?
長崎氏 日本の多くの企業はパートナーを経由してITを導入してきたという歴史があり、その意味でパートナーは非常に重要です。われわれはここでは、数よりも「AWSをきっちりとご提案できる」「顧客のニーズに沿ってインテグレーションできる」といった質や深さを重視しています。
パートナーでは「AWSパートナーネットワーク」を用意しています。現在、スタンダードパートナーは約300社あり、最上位のプレミアパートナーは世界でも数十社しかいない中で、2015年にTISが加わり、日本から5社(残る4社はアイレット(クラウドパック)、クラスメソッド、サーバーワークス、野村総合研究所)となりました。
AWSを提供したいという企業は多く、まずは「レジスタード」としてAWSのノウハウを身につけてもらい、スタンダード、アドバンスド、そしてプレミアと上位レイヤに上がってもらう仕組みです。形式的なものではなく、成熟度や事例の数など明確な審査基準を設けています。
われわれはAWSの価値を提案し、適切なアーキテクチャで顧客が利点を感じられるようなプログラムをいくつか用意しています。その1つが「コンピテンシープログラム」で、得意とする分野で認定をとっていただき”お墨付き”として提案ができるものです。DevOps、セキュリティ、Auroraなどがあり、これによりお客様のクラウドへのマイグレーションをしっかりと成功に導くことができます。
システムインテグレーターにとってのAWS
――システムインテグレーターにしてみると、パブリッククラウド事業は収益性が低いのではといわれてきた。実際は違うということか?
個別のパートナーについて語る立場にはありません。ただ、TISがプレミアパートナーになった背景には、顧客の声もあってクラウドを顧客戦略の中核と位置付けていたことがあります。実際、クラウド専業のパートナーも増えており、日本のクラウドの裾野が広がってきています。
オンプレミスからクラウドへの移行にあたって、ノウハウ、スキルセットが必要です。クラウドが無視できなくなっており、ここにビジネスチャンスがあるのは紛れもない事実です。まだ開拓されていないチャンスがあります。例えば、AWSはサービスのリリースを頻繁に実施しており、2015年だけで500以上をリリースしました。
顧客がこの動きにキャッチアップするのは難しいので、ハブとなるようなソリューションを展開するパートナーがいます。パートナーは自社の顧客を一番よく理解しており、適切なタイミングで適切なサービスを提案できます。このような関係が今後ますます求められます。