UXの検討
・現在の設計で生じるUXの検討
UXは直接「設計」できるものではないので、むしろ現在のシステムやUIの設計でどういうUXが生じるのかを検討・把握するのがまずやるべきこととなる。必要に応じて、既にリリースされているアプリケーションやサービスも改めて対象とすべきであろう。
その上で、UXとして改善し強化すべきポイントなどを見極め、具体的な施策を提案する。UI設計の項と重複するが、提案するUXをどうUIやそれ以外の要素で実装するか、ある程度は設計が見通せるとよい。
・求められるUXの洗い出し
ユーザーに何か達成・実行されるべきタスクがあるとき、それを行うにあたって必要な作業・アクション、求められるデータやユーザーが確認すべき情報などを整理し、生じるであろう個々の及び全体のUXを把握する。そして、どこがポイントになるかを見定め、そこでどういったUXを生じさせるべきかを洗い出すのが、UX設計者の重要な役目である。
・目指すべきUXの設定
設計というよりも企画に近い段階であれば、場合によっては、達成/実行すべきタスク自体から問い直し、目指すべきUXを設定し、サービスやアプリケーションがどんなものであるべきかを設計する。いわば最上流のUX設計である。
UIのプロトタイピング
特にUXの検討を行いたい場合などに、UIは実際にプロトタイプで見て、触って、使ってみるのが重要である。プロトタイプのレベルは、いわゆるペーパープロトタイプ的なものからプログラムを組んである程度きちんと動きの見られるも、ハードウェアのモックまで、必要に応じて作るもののレベルはさまざまであろうが、よいUIやUXの設計につなげるには欠かせない要素である。
組織内への啓蒙
UI/UXはコンピュータ関連に限らずさまざまな場面で存在し、生じるものである。製品やサービスの企画・開発を行う部署や組織内の情報システムを取り扱う部署はもちろん、広報や人事、総務などできれば組織全体でのUIやUXへの理解度/知識を向上し活用したい。そのためには UI/UX設計部は多様は部署と連携できるようにするとよいであろう。
組織の規模や業態に合った導入目的を
これまで挙げたようなミッションを全て実施する必然性はなく、またそれを必ずしも一つの部署で担う必要もない。これらの一部から始める、重点を置くのが多くの組織にとって現実的であろう。あなたの組織にUI/UX設計部を作った、作る主たる目的をよく考え、実現するための具体策をはっきりさせておく必要がある。
次回は、UI/UX部に所属するのはどんなメンバーか、その肩書・それぞれの仕事は何なのかを考えていきたい。
- 綾塚 祐二
- 東京大学大学院理学系研究科情報科学専攻修了。 ソニーコンピュータサイエンス研究所、トヨタIT開発センター、ISID オープンイノベーションラボを経て、現在、株式会社クレスコ、技術研究所副所長。 HCI が専門で、GUI、実世界指向インタフェース、拡張現実感、写真を用いたコミュニケーションなどの研究を行ってきている。